キャンピングカーの国内保有台数が、ついに17万3,000台に到達しました。日本RV協会(JRVA)が2026年3月31日に発表した「日本RV協会 年次報告書2025」によると、2025年の国内累積保有台数は前年より8,000台増えて173,000台となり、過去最高を更新しています。

ところが同じ報告書には、一見矛盾するもう一つの数字が並んでいます。2025年のキャンピングカー販売売上総額(新車・中古車合計)は約917億円で、対前年比81.4%。生産台数も7,727台(前年比81%)と、2年連続で前年を下回りました。

「保有台数は過去最高なのに、生産も販売も2割減」——このねじれた現象は何を意味するのでしょうか。本記事では、日本RV協会の公表データを軸に、キャンピングカー市場で進む「二極化」の構造を統計から読み解きます。

2025年の最新統計サマリー:3つの数字が示す「ねじれ」

まず、日本RV協会「年次報告書2025」(2026年3月31日発表)の主要数値を整理します。

指標2025年前年比
国内累積保有台数173,000台+8,000台(過去最高)
販売売上総額(新車・中古車合計)約917億円81.4%
生産台数7,727台81%(2年連続減少)

注目すべきは、3つの数字の方向がバラバラだという点です。保有台数(ストック)は右肩上がりを続ける一方、生産台数と販売総額(フロー)は明確な減少に転じています。

前年(2024年)の統計と比べると、落差はさらに際立ちます。「キャンピングカー白書2025」(2024年実績、日本オートキャンプ協会による抜粋公開)によれば、2024年の販売総額は過去最高の1,126.5億円(前年比107%)、生産台数は9,559台でした。つまり2025年は、過去最高を記録した直後の年に、金額ベースで約200億円強、台数ベースで約1,800台の縮小が起きたことになります。

保有台数はなぜ増え続けるのか——20年で3倍以上に

林間キャンプ場でサイドオーニングを広げたバンタイプのキャンピングカーの側面。長期保有され愛用されるキャンピングカーのイメージ

保有台数の長期推移を振り返ると、キャンピングカーというジャンルの定着ぶりがよくわかります。日本RV協会の統計等によれば、国内保有台数は次のように推移してきました。

  • 2005年:約5万台
  • 2016年:10万台を突破
  • 2023年:15万台を突破(約15万5,000台)
  • 2024年:16万5,000台
  • 2025年:17万3,000台(過去最高)

約20年で3倍以上に増えた計算です。ここで押さえておきたいのが、保有台数は「ストック(累積)」の指標だという点です。キャンピングカーは一般の乗用車に比べて長く使われる傾向があり、新車が売れなくても、廃車になる台数を新規流入(新車+中古車としての市場残存)が上回っている限り、保有台数は増え続けます。

つまり「保有台数が過去最高」という事実は、市場の勢いそのものではなく、これまでに積み上がった需要の総量と、キャンピングカーが長期保有される資産であることを示しています。保有台数の増加だけを見て「市場は絶好調」と判断するのは早計だ、というのが統計を読む際の第一のポイントです。

一方、生産・販売は2年連続のマイナス

フロー側の数字を詳しく見てみましょう。

2025年の生産台数7,727台は前年比81%で、減少は2年連続です(2024年も前年比95%の9,559台と、すでに減少に転じていました)。販売総額も、2024年の1,126.5億円から2025年は約917億円へと2割近く縮小しました。

この減少について、日本RV協会はプレスリリースの中で「ベース車両が納品されない、もしくは遅れる事例が多数発生」したことが市場全体に大きな影響を及ぼしたと説明しています。国産キャンピングカーの多くはハイエースやカムロード、軽自動車などの既存車両をベースに架装して作られるため、ベース車両の供給が滞ると、需要があっても生産できないという構造的な制約を抱えているのです。

言い換えれば、2025年の販売減は「買いたい人が消えた」ことを必ずしも意味しません。供給側のボトルネックが数字を押し下げた側面が大きい、というのが業界団体の公式見解です。ただし、供給制約が長引けば納期の長期化や価格上昇を通じて需要側の意欲にも影響しうるため、今後の統計で需要そのものの動向を注視する必要があります。

「二極化」の正体——統計から読み取れる3つの構造

ここからが本記事の核心です。「保有は増えるのに販売は減る」という現象を分解すると、キャンピングカー市場では少なくとも3つの二極化が同時に進んでいると整理できます。

二極化①:ストック(保有・利用)とフロー(新車生産・販売)の乖離

1つ目は、すでに見てきた保有台数と生産・販売台数の乖離です。保有台数173,000台という数字の裏には、すでにキャンピングカーを手に入れて楽しんでいる17万台分のユーザーがいます。年次報告書2025のユーザー調査でも、約8割が旅行目的で使用し、7割が2泊3日以上の旅行をしているなど、利用の実態は活発です。

一方で、これから買おうとする人に対しては、ベース車両不足・生産減という壁が立ちはだかっています。「持っている人は満喫し、買いたい人は買いにくい」——これが第一の二極化です。

二極化②:新車市場と中古車市場

屋外展示場に整然と並ぶ大小さまざまな中古キャンピングカーの列。拡大する中古車市場のイメージ

2つ目は、新車と中古車の明暗です。「キャンピングカー白書2025」によれば、2024年の中古キャンピングカー市場は前年比180%と急拡大しました。同年の新車を含む販売台数がエンドユーザー向け18,947台(前年比118%)だったことを踏まえても、中古車の伸びは突出しています。

新車の供給が絞られれば、その受け皿として中古車市場に需要が流れるのは自然な動きです。キャンピングカーはもともとリセールバリューが高いといわれるジャンルですが、新車が手に入りにくい局面では中古車の存在感がさらに増します。「新車は縮小、中古車は拡大」という第二の二極化は、購入を検討している人にとって選択戦略に直結する変化といえるでしょう。

二極化③:市場規模の拡大と、事業者収益の圧迫

3つ目は、市場の外形と事業者の収益性の乖離です。東京商工リサーチ(TSR)が2025年に公表した調査によれば、キャンピングカー関連事業を手がける企業は全国152社にのぼり、業績を比較できる60社の合計売上高は2023年の約390億円から2024年は約411億円へと5.4%増加しました。ところが同じ60社の利益合計は約10.3億円から約9.2億円へと減益になっています。

売上は伸びているのに利益は減る——ベース車両や資材の調達コスト上昇、納期遅延への対応負担などが収益を圧迫している構図がうかがえます。市場全体の金額規模だけを見ていては気づきにくい、供給サイドの二極化です。

データで見る車種構成とユーザー像

キャンピングカーの無人の車内ダイネット。木目調の内装のテーブルに白いマグカップ2つと地図が置かれ、窓の外に森と川の景色が広がる

市場の中身も統計で確認しておきましょう。「キャンピングカー白書2025」(2024年実績)によると、車種別の生産構成比は次のとおりです。

  • バンコン(バンベースの架装車):67%
  • キャブコン(トラックベースの居住空間架装車):19%
  • 軽キャンパー:11%
  • キャンピングトレーラー:2%

ハイエースなどをベースとするバンコンが全体の3分の2を占め、日本のキャンピングカー市場の主役であることがわかります。

ユーザー属性では、50〜60代が76.5%と圧倒的多数を占め、地域別では関東が34.6%で最多。利用実態については、年次報告書2025のアンケートで「子どもと感動を共有する機会が得られた」が67.9%、「家族の仲が深まった」が62.5%にのぼるなど、ファミリー・夫婦での旅行体験に価値を見出す層が中心です。旅行1回あたりの支出は「3〜6万円」が43.8%で最多となっており、宿泊費を抑えつつ現地での体験にお金を使うスタイルがうかがえます。

ドイツは約160万台——国際比較で見る「伸びしろ」

日本の173,000台という保有台数は、国際的に見るとどの水準なのでしょうか。日本RV協会はプレスリリースの中で、国土面積が日本に近いドイツでは約160万台のキャンピングカーが保有されていると紹介しています。単純比較で日本の約10倍です。

もちろん、道路事情、駐車環境、休暇制度、キャンプ場インフラなど前提条件は大きく異なるため、「ドイツ並みになれば10倍成長する」と考えるのは乱暴です。それでも、キャンピングカー文化が成熟した国との差がこれだけ大きいという事実は、日本市場がまだ飽和には程遠いことを示唆しています。保有台数が毎年数千台ペースで積み上がり続けている現状は、この長期的な浸透プロセスの途中経過と位置づけられるでしょう。

今後の注目ポイント——統計から考える3つの論点

これまでのデータを踏まえ、今後のキャンピングカー市場を見るうえで注目したい論点を3つ挙げます。

1. ベース車両供給の正常化はいつか

2025年の生産減の主因は供給制約でした。ベース車両の納品が正常化すれば、積み残された需要が生産・販売の回復として統計に表れる可能性があります。来年以降の年次報告書で生産台数が反転するかどうかが、最初のチェックポイントです。

2. 中古車市場の整備

新車供給が細るなかで受け皿となる中古車市場は、価格の透明性や品質保証の仕組みが発展途上です。2024年に前年比180%と急拡大した市場がどう成熟していくかは、購入検討者の選択肢を左右します。

3. 「旅行以外」の用途拡大

日本RV協会は、災害時の住居やテレワークオフィスとしての利用など、多用途化への関心の高まりを指摘しています。レジャー需要だけに依存しない市場構造への転換が進めば、景気や供給変動への耐性も変わってくるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 保有台数が増えているのに販売が減っているのは矛盾では?

A. 矛盾ではありません。保有台数は過去からの累積(ストック)、販売・生産はその年の取引量(フロー)という別の指標です。キャンピングカーは長期間使われるため、新規の販売が減速しても、廃車を上回る流入がある限り保有台数は増え続けます。

Q. 2025年に販売が減った主な理由は?

A. 日本RV協会は、ベース車両が納品されない・遅れる事例が多数発生したことが市場全体に大きく影響したと説明しています。需要の消失というより、供給側の制約が主因とされています。

Q. いま買うなら新車と中古車のどちらが有利?

A. 一概には言えませんが、統計上は新車の生産が2年連続で減少する一方、中古車市場は拡大しています(2024年は前年比180%)。新車は納期が読みにくい局面が続いているため、希望の車種・時期が明確な場合は中古車も含めて比較検討するのが現実的です。

まとめ:数字の「ねじれ」は市場の転換点のサイン

日本RV協会「年次報告書2025」が示した2025年のキャンピングカー市場は、保有台数173,000台(過去最高)、販売総額約917億円(前年比81.4%)、生産台数7,727台(前年比81%)という、方向の異なる数字が同居する一年でした。

この「ねじれ」の正体は、①ストックとフローの乖離、②新車市場の縮小と中古車市場の拡大、③市場規模の拡大と事業者収益の圧迫という3つの二極化です。保有台数の増加はキャンピングカー文化の着実な浸透を、生産・販売の減少は供給側のボトルネックを、それぞれ映し出しています。

ドイツとの約10倍の保有台数差が示すとおり、日本市場の長期的な伸びしろは依然として大きいと考えられます。当面はベース車両供給の正常化と中古車市場の動向が、市場の行方を占う最大の変数になるでしょう。次回の年次報告書で、この二極化が解消に向かうのか、さらに深まるのか——引き続きデータを追っていきます。


出典

  • 一般社団法人日本RV協会「日本RV協会 年次報告書2025」プレスリリース(2026年3月31日発表、PR TIMES)
  • 一般社団法人日本オートキャンプ協会「『キャンピングカー白書2025』抜粋」(2024年実績データ)
  • 株式会社東京商工リサーチ「拡大するキャンピングカー市場 〜『高嶺の花』から普及期、立ちはだかる壁〜」(TSRデータインサイト、2025年)
  • 一般社団法人日本自動車会議所「23年キャンピングカー保有台数15万台超 日本RV協会まとめ」

※本記事の統計数値はすべて上記公表資料に基づきます。最新の詳細データは日本RV協会の公式発表をご確認ください。