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初めての車中泊で、20Lのウォータータンクを積む人がいます。
夜、歯を磨こうとしてタンクを床に置く。コックをひねる。コップが入らない。吐水口が床のすぐ上にあるからです。持ち上げて傾けようとすると、満タンで20kgあります。
結論。10Lをひとつ買って、20Lはやめる
わたしが薦めるのは硬質タンク10Lを1個。岩谷マテリアル ウォッシャブルタンク Nタイプ 10L(メーカー公表 0.6kg・270×180×300mm・レバー式コック)です。
薦めないのは次の2つに当てはまる人。年に2〜3泊しかしない人と、洗い物を車内でやる気がない人。この場合は2Lのペットボトル2本のほうが速くて安いです。
20Lは買わなくていい。理由は容量ではなく、満タンで20.8kgになるという物理にあります。
コックは、床から何センチのところに来るか
水は1Lでほぼ1kg。10Lタンクなら本体0.6kgを足して約10.6kg、20Lなら本体0.8kgを足して約20.8kgです(本体質量は岩谷マテリアル公式値)。
ここまでは誰でも計算できます。見落とされるのは、その重さを「注ぐたびに動かせるか」という点のほうです。
タンクのコックは、ほぼ例外なく本体の下端近くに付いています。水を最後まで出し切るためです。だから床に直置きすると、吐水口の高さは数cm。マグカップも歯ブラシのコップも入りません。
解き方は3つあります。順に見ていきます。
ひとつ目は、段差に載せること。リアゲートの開口部、スライドドアのステップ、シートの座面。どれも床から30〜50cm上がります。追加の出費はゼロ。わたしはこれで足りると思っています。
ふたつ目は、スタンドを買うこと。キャプテンスタッグ ウォータータンク用スタンド M-8670 は公式値で高さ365mm、質量1.4kg、材質は鉄。折りたたんでも315×460×55mmあります。屋外で使うなら快適ですが、車中泊で積むには大きい。板1枚ぶんの面積を占めます。
みっつ目は電動ポンプ。タンクを動かさずに、押すだけで水が上に出てくる方式です。ただしここに落とし穴があります。市販の電動ウォーターポンプ(約1,469円・2026年8月21日時点)は、商品説明が「ガロンボトルに取り付けられて」となっていて、商品詳細欄の容量表示は18.9L。つまり5ガロンのウォーターサーバー用ボトル専用です。10Lタンクの口には付きません。「車中泊 給水ポンプ」で出てくる製品の多くがこの規格なので、買う前に首の径を見てください。
わたしが選ぶ基準は、片手でコックを開けられるかどうか。もう片方の手はコップを持っています。ひねるタイプよりレバー式のほうが速い。

10kgを一度に持つか、5kgを二度に分けるか
給水とは、空のタンクを持って水場まで歩き、満タンにして戻ってくる作業です。
片道の距離はRVパークなら数十m、道の駅ならもっと歩きます。10.6kgを片手でぶら下げて、その距離を戻る。それが「10Lタンク1個」の実体です。
分けて積むと、この作業が変わります。
アイリスオーヤマのウォータータンク10Lは、Amazonの商品説明で1個170g、使用時22.5×22.5×27cm、折りたたみ時20×20×6cm。2個セットで約1,760円(2026年8月21日時点)です。
軽さより効くのは、空にすると厚さ6cmになることのほう。1個を満タンで積み、もう1個は畳んでおく。足すときだけ2個目を開く。往復の重さが半分になります。
硬質タンクは空でも体積が減りません。岩谷の10Lは水が入っていなくても270×180×300mmを占め続けます。ここは硬質の弱点です。
もっと軽い予備なら、キャプテンスタッグのコンパクト ウォータータンク5L(UE-2024)。公式値で幅330×縦303mm(水を入れる前)、本体はPETとナイロンとポリエチレンの3層。約458円です。コックは付いていません。キャップから直接注ぐ袋なので、メインには向かない。ただ、500円玉1枚で「もう5L足せる」という保険が手に入ります。
わたしの組み合わせは、硬質10Lを1個と袋5Lを1枚。硬質は毎晩使い、袋は足りなくなった夜だけ開けます。実数はこのあとの表にまとめました。

RVパーク684件を数えた。水道は8割にあるが、飲めるとは書いていない
ここが今日の本題です。「現地で足せばいい」と考えている人は、足せない前提を知っておいたほうがいい。
くるま旅公式サイトのRVパーク施設ページ684件を全数で取得し、「水道」の欄を数えました(取得日2026年8月20日・生HTMLからコメントを除去したうえで集計)。
この684件は、くるま旅公式サイトに施設ページがある数です。名簿が違えば母数も変わります。日本RV協会の発表は2026年7月末時点で676件、予約サイトのRV-Park.jpに掲載されているのは579件でした。以下の割合は、すべて684件を分母にしています。
| 水道の欄 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| あり(無料) | 546件 | 79.8% |
| あり(有料) | 12件 | 1.8% |
| なし | 111件 | 16.2% |
| 項目そのものが無い | 15件 | 2.2% |
8割にはあります。ここまでは心強い数字。
問題はその先です。水道「あり」の558件のうち、飲めるかどうかに触れている施設は45件しかありません。
| 備考の内容 | 件数 |
|---|---|
| 飲めないと読める記載がある | 21件 |
| 飲めると明記している | 5件 |
| どちらとも取れない | 19件 |
| 飲用可否に一切触れていない | 513件 |
実際の文面を引きます。いずれも施設ページの原文です。
飲用および給水は不可 (RVパーク GranPark八甲田・水道欄の備考)
施設内すべて井戸水です。飲用は不可です。 調理及び飲料水はご持参ください。 (RVパーク袖ヶ浦オートキャンプ・同)
定期的に水質検査を受けておりますが、飲用水としてはご利用いただけません (RVパーク Wonderful Garden 柏・同)
「水道あり」と表示されていても、それは手洗いと洗い物の水かもしれない。しかも513件は、可否そのものが書かれていません。現地で確かめるまで分からないというのが正確な状況です。
有料12件のうち、量で課金する施設が3つあった
水道が「あり(有料)」の12件を1件ずつ開いて読みました。多くは「利用料金に含みます」という意味での有料表示で、実質は無料です。
ただし3件は、汲む量そのものに値段を付けていました。 タンクを持った車中泊利用者を明確に想定した書き方です。
都市型RVパーク【bravo港町神戸】の原文。
■手洗いや歯ブラシ程度の「軽微な水のご利用は無料」 ■ポリタンク等 3L~10L:100円/回 ■ポリタンク等 11L~20L:200円/回 ■車の給水タンク 21L~50L:500円/回
RVパーク藍染結の杜(北海道)は、飲用可であることを明記したうえで量を刻んでいます。
1. 水道は飲用可能です 2. 大量の給水(タンク満水)は有料です。 20ℓまで無料 21〜100ℓまで100円 100ℓ以上 毎プラス100円
RVパークしの389安曇野ステーション(長野県)は、用途そのものを限定します。
・水道は、手洗い・洗面用です。食器類や食品の洗剤で利用はご遠慮ください。
つまり10Lまでなら、多くの施設で気兼ねなく汲める。20Lを超えると話が変わってくる。ここでも10Lという区切りが効いてきます。
汲めても、流せるとは限らない
見落としがちなのが排水です。
RVパーク室蘭 ZEKKEI BASE CAMPは、水受けを置いたうえでこう書いています。
管は排水管につながっているわけではないので、洗剤を使ったりすることは禁止させていただいております。
RVパーク ビバーク+那須高原の注意事項も同じ構図です。
水場は排水機能が無い為、給水のみで洗い物等はできません。
水が出る蛇口があることと、汚れた水を捨てられることは別の設備です。684件のダンプステーション(汚水処理設備)の欄も数えました。ブラックとグレーの両方が可なのが96件、グレーのみが15件、ブラックのみが3件。合わせて114件、16.7%です。 「なし」が258件、項目そのものが無いのが312件でした。
そして、水道なしの111件のうち28件はローソン併設のコンビニRVパークで、28件すべてが同じ一文を載せています。
・歯磨きや洗顔のためにローソン店舗の洗面所をご利用いただけます。 ・給水タンクへの補水や、食器の洗浄にはご利用いただくことは出来ませんのでご注意をお願いいたします。
歯磨きはできる。タンクへの補水はできない。書き分けられています。
道の駅も同じです。国土交通省が示す「道の駅」の登録要件のうち休憩機能は、「利用者が無料で24時間利用できる」「十分な容量を持った駐車場」「清潔なトイレ(原則、洋式)」「子育て応援施設(ベビーコーナー等)」の4つ。給水設備は登録要件に入っていません。 ある道の駅に水汲み場があったとしても、それは制度ではなく、その駅の判断です。
洗い物についても数えました。684件のうち炊事場が「あり」は183件、26.8%。4件に1件です。残りは「なし」248件、項目そのものが無いのが253件でした。
結論はひとつ。口に入る水は、持って出る。 現地の水は、流すだけの水として当てにする。この線引きだけで必要量が決まります。
滞在中の水まわりは風呂とゴミの段取りとも連動します。入浴の時間割は車中泊の風呂は「入れる最終時刻」で決まる、洗い物のあとに出る生ゴミの処理は車中泊のゴミはどこに捨てるかで施設別に整理しています。

4つの容器を実数で並べる
価格はすべて2026年8月21日時点のもの。質量とサイズはメーカー公式値を優先し、公式に記載がないものはAmazonの商品説明から取りました。
| 製品 | 形式 | 容量 | 空の質量 | 使用時サイズ | 収納時 | 出し方 | 実勢価格 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() 岩谷マテリアル ウォッシャブルタンク Nタイプ 10L | 硬質 | 10L | 0.6kg | 270×180×300mm | 変わらない | レバー式コック | 約1,036円 |
![]() 岩谷マテリアル ウォッシャブルタンク 20L | 硬質 | 20L | 0.8kg | 355×250×330mm | 変わらない | レバー式コック | 約989円※ |
![]() アイリスオーヤマ ウォータータンク 10L 2個セット | 折りたたみ | 10L×2 | 170g(1個あたり) | 225×225×270mm | 200×200×60mm | コック付き | 約1,760円(2個) |
![]() キャプテンスタッグ コンパクト ウォータータンク 5L | 袋 | 5L | 実測値の公表なし | 幅330×縦303mm(水を入れる前) | たためる | キャップから直接 | 約458円 |
※20Lは価格こそ10Lより安いものの、8月21日時点のお届け予定が9月下旬と表示されていました。在庫が薄い商品です。
表を作って自分でも驚いたのは、20Lタンクの本体質量が0.8kgしかないこと。容器はほとんど重くありません。重いのは水です。だから「タンクが軽いから20Lでも大丈夫」という判断は成立しない。
岩谷の10Lは、メーカー公式が270×180×300mmとしているのに対し、Amazonの商品説明は270×180×H260mmで本体重量約640gと書いています。40mmの差はコックの分だと思われますが、断定はできません。後席下のような高さの決まった場所に入れる予定なら、公式の300mmで見ておくほうが安全です。
買わなくていい人。2Lペットボトル2本で越えられる夜
タンクを買わずに済む線を先に引きます。
1泊で、歯磨きと手洗いとコーヒーだけ。これなら2Lペットボトル2本、つまり4Lで足ります。
農林水産省の家庭備蓄ポータルは「飲料用と調理用(※)だけで一人当たり1日3リットルの水が必要と言われており、最低3日分として9リットルの備蓄が必要になります。」としています。注釈が効いていて、「(※)湯せん、食品や食器を洗ったりする水は別途必要です。」と続く。
つまり3Lは口に入る水の話であって、洗う水は含みません。裏を返せば、洗い物をしない1泊なら、必要な水は3L前後で足りるということです。
2Lペットボトルは、家にある容器としてよくできています。1本で約2kg。自分の手で持ち上げて、コップに直接注げる。コックの高さ問題が最初から存在しません。空になれば捨てられるので、帰りの荷物が減ります。6本入りのケースは約12kg。10Lタンクを満タンにした10.6kgより、むしろ重い。積載の負担は減りません。
損益分岐は、お金だけで見ると早く来ます。タンクは約1,036円。2Lペットボトル6本ケースを仮に600円とすると、2回目の車中泊でタンクのほうが安くなる計算です。
ただし、その式に出てこないコストがあります。タンクは年に2泊しか使わなくても、残りの363日ぶんの置き場所を家で取り続ける。空でも270×180×300mmです。使うたびに洗って、丸1日干す。年2泊のためにそれをやるかどうかが、実際の分かれ目です。わたしなら年2泊では買いません。
もうひとつ、買わなくていい人がいます。車内で調理も洗い物もしない人。
先ほどの684件でいえば、炊事場があるのは183件、26.8%でした。洗い物をする前提が立たない夜は、そもそも大容量の水が要りません。歯磨きのうがい、手洗い、朝のコーヒー。全部足しても、わたしの見積もりで1L前後です。10Lを積む理由は、そこにはありません。
代用について、ひとつだけ止めます。灯油用のポリタンクに水を入れないでください。 用途が違います。麦茶用の2Lピッチャーも、蓋が密閉されないので走行中に倒れます。家庭用品で代わりになるのは、結局のところペットボトルです。
買ったあと面倒になるのは、コックの中とタンクの乾燥
道具は買った日ではなく、3回目の撤収で評価が決まります。水タンクで面倒になるのは2か所。
ひとつ目はコックの内部です。ほとんどの製品でコックは分解できません。水を入れっぱなしで数週間置くと、内側にぬめりが出ます。
キャプテンスタッグはコックだけを部品として売っていて、抗菌ボルディーウォータータンク用コック M-9536が約721円、公式値で70×85×70mm、内径65mm。交換部品が買える設計かどうかは、タンクを選ぶときに見ておく価値があります。
ふたつ目は乾燥です。岩谷が「ウォッシャブル」を名乗るのは、公式サイトいわく「大型給水口の採用により、タンク内部に手を入れて洗えるので、いつでも清潔に使えます。」だから。大キャップの直径は約98mm、小キャップが約41mmです。98mmなら手首まで入ります。
それでも、逆さにしただけでは底の角に水が残ります。帰宅したら大キャップを外して立てておく。丸1日かかります。
折りたたみタンクはもっと乾きません。折り目に水が入ると、そこだけ乾かないまま畳むことになる。アイリスの2個セットのように「1個は常に空」で回すと、この問題が半分になります。
撤収のとき、水は使い切るのが基本です。残した水は、次に持ち出すときにどのみち入れ替えることになります。捨てる場所は選んでください。施設の排水設備がない場所で流すのは筋が悪い。RVパーク684件のうち炊事場があるのは183件なので、洗い物と排水をセットで考えるなら、予約前に施設ページを見ておくのが早いです。
なお、車内に水を積むと結露の条件も変わります。密閉した車内で湯を沸かせば、その分だけ窓に水が付く。仕組みは車中泊の結露は湿気の量と窓の温度で決まるに書きました。
月1回泊まる人はタンク、年2泊なら見送り
月1回以上車中泊するなら、硬質10Lをひとつ。 岩谷マテリアル ウォッシャブルタンク Nタイプ 10L(約1,036円)に、たためる予備を1枚。コックの高さはリアゲートの縁で解決します。スタンドは屋外中心の人だけでいい。
年に2〜3泊なら、買わずに2Lペットボトル。 元は2回目で取れますが、残りの363日はタンクを家で干して置いておく側に回ります。洗い物をしない夜なら、4Lで越えられます。
どちらの人にも共通するのは、飲む水を現地に期待しないこと。RVパーク558件が「水道あり」と書いていても、飲めると明記しているのは5件でした。数字はそう言っています。








