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車中泊の着圧ソックスはmmHgで選ぶ|足のむくみと血栓【2026年版】

着圧ソックスは強さで選ぶと外します。日本静脈学会のガイドラインが示す圧の4区分、日本旅行医学会がひざ上タイプに付けた注意書き、厚生労働省の予防6項目を一次情報から並べ、売り場のhPa表記をmmHgに直して6足を比べました。

日向あかり
キャンピングカージャーナルのギア担当。ソロキャンプ歴7年。道…
公開2026.08.30
読む時間18 min
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9月の連休、道の駅の駐車場。運転席を少し倒しただけの姿勢で朝を迎える。
起きたら、ふくらはぎがぱんぱん。靴下の跡がくっきり残っている。
血栓が怖いという話は聞いたことがある。では、何を買えばいいのか。

わたしの結論を3行で置きます。

  • 着圧ソックスは強さで選ばない。車中泊の目的なら足首20mmHg未満、丈は膝下のハイソックス一択
  • 売り場の表記はたいてい「hPa」。0.75を掛けるとmmHgになる。40hPaは30mmHgで、この用途には強い
  • 買う前に、0円でできることが6つあります。厚生労働省が避難所に配っている紙に書いてあります

先に断っておきます。わたしは医療の人間ではありません。
この記事は道具の選び方の話で、診断や治療の話はしません。脚の痛み・腫れ・息苦しさが出たときは、道具を探さずに医療機関へ。 ここだけは動かないでください。
以下の数字は、公的機関・学会・メーカーの公表値と、わたしが商品ページを数えた集計です。どちらなのかは、その都度書きます。閲覧日は2026年8月30日。

厚生労働省の紙には、ソックスが書かれていない

まず、この話の出どころを確かめました。

出しているのは厚生労働省健康局健康課保健指導室。日付は平成30年6月18日で、宛先は「別紙の府県・保健所設置市 衛生主管部(局)」です。
本文の書き出しは「本日の地震で被災され、避難所生活を送られている被災者等の健康管理について」。地震の当日に出された紙、ということです。そこに別添として「エコノミークラス症候群予防のために」という媒体例が付いています。

食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります。 (厚生労働省健康局健康課保健指導室・避難生活を過ごされる方々の深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防について・平成30年6月18日事務連絡・別添「エコノミークラス症候群予防のために」媒体例(1)・2026年8月30日閲覧)

条件が3つ書いてあります。水分不足、狭い座席、足を動かさないこと。
災害の話に見えますが、書かれている条件はそのまま連休の車中泊です。

同じ紙の「予防のために心掛けると良いこと」は6項目。原文のまま並べます。

  1. ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行う
  2. 十分にこまめに水分を取る
  3. アルコールを控える。できれば禁煙する
  4. ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない
  5. かかとの上げ下ろし運動をしたりふくらはぎを軽くもんだりする
  6. 眠るときは足をあげる

気づいたことを1つ。6項目のどこにも、着圧ソックスは出てきません。
全部が体の動かし方と飲み方の話で、買い物の話がゼロ。この記事はソックスの記事ですが、順番としては先にこの6つがあります。

では学会側はどう言っているか。日本旅行医学会が熊本地震のときに公開した「車中泊の血栓症予防!」というページには、7ヶ条のあとにこう書かれています。

そして、可能であれば、着圧ソックスや弾性ソックスを着用してください! ふくらはぎに圧をかけることにより、深部静脈の血流速度が増加します。 (日本旅行医学会・車中泊の血栓症予防!・2026年8月30日閲覧)

「可能であれば」。位置づけがよく分かる言い方です。
7ヶ条のほうにも、車中泊ならではの項目が混じっています。「不自然な姿勢で寝てしまうため、睡眠薬は使用しない」。「数人で車中泊する場合は、女性や高齢者をドア側に」。
ドア側という指示は、外に出て歩くまでの歩数を減らすためでしょう。道具を1つも買わずにできる配慮です。

助手席に並べて置かれた膝下丈の着圧ソックス2足と、丸めた巻き尺
買う前に測るのは足首まわり。靴のサイズでは決まりません

「着圧ソックス」と「弾性ストッキング」は、同じ棚の別の商品

ここが本題です。売り場では隣に並んでいますが、法律上の扱いは別もの。

日本静脈学会の「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」は、圧迫に使う道具をこう分けています。

わが国で圧迫療法に使用する装具・機器には,関連法規である「医薬品,医療機器等の品質,有効性および安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の「医療機器」と,薬機法に該当しない「非医療機器(雑品)」があり,医療機器は性能,安全性が製造者に担保され,使用目的,効果,使用方法,警告,禁忌が添付文書に明記されている。 (日本静脈学会・静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025・2026年8月30日閲覧。以下、同ガイドラインからの引用は同じ)

医療機器のほうは、使用目的・効果・使用方法・警告・禁忌が添付文書に書かれています。
非医療機器についてガイドラインが求めているのは、そこまで強くありません。同じ節はこう続きます。「医療機器では添付文書,非医療機器では取り扱い説明書にしたがって適切に使用する」。つまり非医療機器にも取り扱い説明書はある。ただし、禁忌が明記されている保証は、医療機器の側にしか付いていません。

見分け方は簡単で、商品ページに「一般医療機器」と「製造販売届出番号」が書いてあるかどうか。たとえばピップのスリムウォーク 旅脚ハイソックスの商品ページには、こう並んでいます。

・一般医療機器 弾性ストッキング 販売名:旅脚ハイソックス 製造販売届出番号:29B2X10004000008 (Amazon.co.jp・スリムウォーク 旅脚ハイソックス 商品ページの箇条書き・2026年8月30日閲覧。リンクは後半の比較表に)

もう一段上に、病院で使う世界がある。
厚生労働省は、慢性静脈不全による難治性潰瘍の治療に使う弾性着衣等の療養費について、支給の対象をこう定めています。

弾性ストッキングについては、30㎜Hg以上の着圧のものを支給の対象とする。ただし、強い着圧では明らかに装着に支障をきたす場合など、医師の判断により特別の指示がある場合は15mmHg以上の着圧であっても支給して差し支えない。 (厚生労働省保険局医療課長・保医発0327第8号「慢性静脈不全による難治性潰瘍治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について」・令和2年3月27日・2026年8月30日閲覧)

支給されるのは、医師が「J001−10 静脈圧迫処置」を行った患者が、医師の指示に基づいて買った分だけ。
30mmHgという数字が出てくる世界は、医師の指示書があって初めて動く世界です。今日の話はその手前にあります。

軸は3つ。強さ、丈、足首まわり

ここから買い物です。わたしが見るのはこの3か所だけ。

軸1:足首の圧をmmHgに直す

いちばん大事な軸です。ガイドラインには圧の区分が表で載っています。

区分圧迫圧疾患と症状の程度(原文のまま)
軽度圧迫圧20mmHg未満深部静脈血栓症の予防(16〜19mmHg)、廃用症候群による浮腫、健常者,非脈管疾患による浮腫
弱圧20〜29mmHg下肢静脈瘤(皮膚病変なし)、静脈血栓後症候群(軽症)、下肢リンパ浮腫(軽度)、上肢リンパ浮腫、先天性の脈管異常(軽症,静脈奇形)
中圧30〜39mmHg下肢静脈瘤(皮膚病変あり)、静脈血栓後症候群、下肢リンパ浮腫、先天性の脈管異常
強圧40mmHg以上下肢静脈瘤(静脈性潰瘍)、静脈血栓後症候群(重症,静脈性潰瘍)、下肢リンパ浮腫(重度)、先天性の脈管異常(重症,動静脈瘻)

(同ガイドライン・表4「圧迫圧選択の目安」の全4行。項目名は原文どおり。原文で改行になっている区切りだけ、読点に置き換えました)

本文の言い方はこうです。

わが国では軽度圧迫圧(20mmHg未満),弱圧(20〜29mmHg),中圧(30〜39mmHg),強圧(40mmHg以上)の4種類に分類される1)。深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)の予防には軽度圧迫圧,下肢静脈瘤には弱圧〜中圧,リンパ浮腫,静脈性潰瘍,静脈血栓後症候群には強圧を選択するなど,患者や病態に応じて選択する。

読み方を1つだけ。血栓の予防に割り当てられているのは、いちばん弱い区分です。
強いほど効くという話になっていない。しかも表がDVT予防に添えている数字は16〜19mmHg。区分の上限である20mmHgより、さらに下です。

ところが売り場に並ぶ数字は、たいていhPaです。アルケアの説明が親切なので引きます。

「hPa(ヘクトパスカル)」は、圧力を表す国際単位です。数値が大きくなるほど脚を圧迫する力が強くなることを表します。(1hPa=0.75mmHg) ※アンシルクシリーズは医療機器です。圧迫圧選定の際は、必ず医師の指導を受けてください。 (アルケア・国産医療用弾性ストッキング「アンシルク・1 ハイソックス」を新発売・2026年8月30日閲覧。2文は原文で連続しています)

換算の説明と、医師の指導を受けるようにという注記が、同じ場所に並んでいます。
この記事で圧の数字を扱うのは、売り場の表示を読めるようにするためです。自分に合う圧を決める作業は、この記事の外にあります。

ガイドラインも同じ換算を載せていて、1999年に経済産業省がhPaを使うよう指示したという経緯まで書いてあります。
覚えるのは0.75だけ。よく見る数字を直しておきます。

表示mmHg換算区分
19hPa約14mmHg軽度圧迫圧
21hPa約16mmHg軽度圧迫圧
27hPa約20mmHg弱圧の下端
30hPa22.5mmHg弱圧
40hPa30mmHg中圧

「足首40hPa」と大きく書いてある商品は、中圧です。
血栓の予防という目的から見れば、ふた区分ぶん上。わたしはこの用途では選びません。

軸2:丈は膝下。ただし理由は単純ではない

日本旅行医学会のページには、太字にしたいくらいの注意書きがあります。

注 ひざ下までのタイプ(ハイソックス)を必ず使用してください。ひざ上までのタイプの使用は、車中泊ではかえって危険です。

「かえって危険です」。学会が公開している文章としては、かなり強い言い方です。
ただし、このページに理由は書かれていません。 書かれていないものを推測で埋めると別の話になるので、ここは「理由は書かれていない」で止めます。

わたしが確かめられたのは、別の3点です。ぜんぶ日本静脈学会のガイドラインから。

ひとつ。丈が長いほうが効く、という話にはなっていません。

筋ポンプ作用は主として下腿の筋肉が担っているため,下腿が圧迫されていればタイプによって下肢静脈瘤の浮腫軽減やDVTの予防効果には差がない

ふたつ。皮膚まわりの有害事象は、膝下丈のほうが少ないと出ています。CQ8(静脈血栓後症候群の予防)で、大腿部までの弾性ストッキングと比べたRCT1編の結果がこう整理されています。

一方,AEs発生率(重篤ではないAEs:掻痒感,紅斑,アレルギー反応)は,RR=1.49(1.06–2.11),p=0.02で,ハイソックスタイプ群のAEs発生率が有意に少なかった

対象は患者です。車中泊で寝る人を集めた試験の数字ではない点は、頭の隅に置いてください。

みっつ。ここは、膝下丈に不利な話です。同じガイドラインの別の節に、こう書いてあります。

ストッキングタイプはハイソックスタイプより総腓骨神経麻痺の危険が少ない利点がある

神経の側では、膝下丈のほうが不利という書き方です。ガイドラインは「弾性ストッキング上縁のずり落ち・シワ」と「腓骨神経の走行」を1枚の図に並べています。ここは次の章で詳しく。
そのうえで同ガイドラインは、静脈疾患について「通常は最も着脱しやすく安価なハイソックスタイプを第一選択とする」としています。膝下丈は第一選択であって、危険がゼロという意味ではない。
わたしが膝下丈を選ぶのは、この材料をぜんぶ並べたうえで、車中泊で丈の長いほうを勧める根拠を見つけられなかったからです。

軸3:サイズは足首まわりで決める

靴のサイズで選ばないでください。医療用の製品はサイズ表の基準が違います。

アルケアのアンシルク・1 ハイソックスのMサイズは、足首周囲19〜23cm・ふくらはぎ周囲32〜38cm。アンシルク・2のLサイズは足首周囲21〜25cm・ふくらはぎ周囲36〜42cm。
商品ページのサイズ選定手順には、こう書かれています。「適合するサイズが2つあった場合は、足首周囲が適応範囲の中央値に近いサイズをお選びください」。足首が先で、ふくらはぎが後。

一方、スリムウォークの旅脚ハイソックスは23〜25cm・25〜27cm・27〜29cmの3サイズで、これは足の長さです。
同じ売り場に、決め方の違う商品が混ざっている。買う前にメジャーを1本、家で足首のいちばん細いところに回してください。所要時間は1分です。

売れ筋30件を数えたら、mmHgを書いた商品は0件だった

軸1を実行しようとすると、最初の壁がここにあります。数えました。

集計の条件を先に置きます。対象はAmazon.co.jpの売れ筋ランキング「医療用着圧ソックス」の1ページ目に並んだ上位30件(全数。抜き取りはしていません)。取得は2026年8月30日 01:19〜01:22(日本時間)。各商品ページの商品タイトル・箇条書き・商品の説明・商品紹介コンテンツのテキスト範囲だけを機械検索し、画像の中に焼き込まれた文字、スポンサー枠、レビュー本文は数えていません。ランキングは随時入れ替わるので、あとから開いた人の手元では数が動きます。

探した文字列該当した件数
mmHg0件
hPa(またはヘクトパスカル)7件
どちらも書いていない23件

30件中23件が、圧の数字を1つも出していません。
「段階圧力設計」「医学に基づく」とは書いてある。数字だけがない。

hPaを書いていた7件のうち、その商品自身の足首の値まで特定できたのは5件でした。
旅脚ハイソックスが足首30hPa、メディキュットのメディカルリンパケアが29hPa、ドウシシャのふくらはぎ用が21hPa、スリムウォークの美脚ロング 夏限定クールが21hPa、ゆるい着圧ナイトソックスが18hPa。0.75を掛けると、順に22.5mmHg、約22mmHg、約16mmHg、約16mmHg、13.5mmHg。
残る2件は数えられませんでした。1件はhPaという単位の説明だけで自社の数値がなく、もう1件は他商品と並べた比較表に数値があって、どれが当該商品の値か特定できません。

丈のほうも数えておきます。
商品名に「ハイソックス」「ひざ下」「膝下」と書いてあるものが10件。「ロング」「ストッキング」「ニーハイ・ひざ上」「足指」「ふくらはぎ(用・タイプ)」と書いてあるものが9件。残る11件は商品名から丈を読み取れませんでした。
夜用・美脚用として売られている棚に、車中泊の目的で入っていくことになる。同じ棚でも、探している商品は少数派です。

車内の寝床の足元側。畳んだブランケットを重ねて、足側だけ数センチ持ち上げてある
厚労省の6項目の最後は「眠るときは足をあげる」。畳んだ毛布で足りる

候補6足を、圧の弱い順に並べる

足首の圧を公表している製品だけを、弱い順に並べました。価格は2026年8月30日時点のAmazon表示です。

「圧の区分」はガイドラインの表4の4区分。「軸1」の列は、この記事の目安(足首20mmHg未満)に収まるかどうかです。6足のうち収まるのは2足だけ。残りの4足は目安の外で、なぜ表に載せたかは表の下に書きました。

製品足首の圧(表示のままとmmHg換算)圧の区分軸1(足首20mmHg未満)丈・つま先薬機法上の区分サイズの決め方実勢価格
アルケア アンシルク・1 ハイソックス つま先あり M
アルケア アンシルク・1 ハイソックス つま先あり ブラック M 21402
19hPa=14mmHg軽度圧迫圧収まる膝下・つま先あり一般医療機器足首周囲19〜23cm(M)約2,933円
VENOFLEX FAST AIR ハイソックス 男性用 M
VENOFLEX FAST AIR 医療用弾性ストッキング 男性用 ハイソックス 15-20mmHg ブラック
15〜20mmHg(商品名に明記)軽度圧迫圧〜弱圧の下端概ね収まる(上端が20mmHg)膝下一般医療機器ふくらはぎ周囲・足首周囲約5,324円
アルケア アンシルク・2 ハイソックス つま先あり L
アルケア アンシルク・2 ハイソックス つま先あり ブラック L 18472
27hPa=20mmHg弱圧(下端)外れる(ちょうど20mmHg)膝下・つま先あり一般医療機器足首周囲21〜25cm(L)約3,404円
メディキュット メディカルリンパケア ひざ下 つま先なし L
メディキュット 一般医療機器 メディカルリンパケア ひざ下 つま先なし ブラック L
29hPa=約22mmHg弱圧外れる膝下・つま先なし一般医療機器S/M/L(足のサイズ基準)約2,409円
ピップ スリムウォーク 旅脚ハイソックス 23〜25cm
スリムウォーク 旅脚ハイソックス 一般医療機器 着圧ソックス 23cm〜25cm
30hPa=22.5mmHg弱圧外れる膝下一般医療機器足長23〜25・25〜27・27〜29cm約1,226円
アルケア アンシルク・3 ハイソックス つま先なし M
アルケア アンシルク・3 ハイソックス つま先なし ライトブラウン M 18623
40hPa=30mmHg中圧大きく外れる膝下・つま先なし一般医療機器足首周囲19〜23cm(M)約3,450円

まず、目安の外にある4足をなぜ載せたかから。
足首の圧を数字で公表している製品自体が少ないからです。数字を出している製品だけを弱い順に並べると、この6足になる。目安に収まるのは上の2足だけで、下の4足は物差しの目盛りとして置いています。買うものを探している人は、上2つだけ見てください。

そのうえで、表を作って見えたことが2つ。

ひとつ。この6足の中で、mmHgを商品名に書いているのはVENOFLEXの1足だけ。
アルケアの2足は商品ページの説明文に「27hPa(20mmHg)」「40hPa(30mmHg)」と併記していて、これも親切な部類。残りはhPaのみで、読者が0.75を掛ける前提になっています。

もうひとつ。価格と圧は関係していません。 いちばん安い旅脚が22.5mmHgで、いちばん高いVENOFLEXが15〜20mmHg。
高いほど強い、でも、高いほど弱い、でもない。価格は素材と作りとサイズ展開の話であって、圧の話ではありませんでした。

アンシルク・3を表に入れた狙いは1つ。40hPaがどこに位置するかを、目で見てもらうためです。商品ページの説明も正直で、「足首の圧迫圧は40hPa(30mmHg)で、強い圧迫が得られます」と書いてあります。強い圧迫を得たい人のための製品。車中泊の目的で選ぶ棚とは別のところにあります。

なお、アルケアのアンシルク・2とアンシルク・3の商品ページには、どちらも同じ一文が入っている。「弾性ストッキングの種類は、圧迫圧の強さのほか、形状(ハイソックス・ストッキング・パンティーストッキング)やサイズもさまざまなものがあります。主治医と相談のうえで自分にあった種類をお選びください。」
メーカーが「主治医と相談のうえで」と書いている以上、わたしの表は候補を絞る道具どまりです。

買わなくていい人

正直に書きます。この記事を読んだ人のうち何割かは、買わないほうがいい。

1. 4〜5時間ごとに車を降りて歩ける人

日本旅行医学会の7ヶ条の1番目が、この項目です。車外に出て散歩をする。
連休の移動で、SAや道の駅に4〜5時間おきに寄る運転をしているなら、その時点で予防の中心は済んでいます。ソックスは、それができない夜の保険です。

2. トイレを気にして水分を控えている人

ここを先に直してください。
厚労省の6項目の2番目は「十分にこまめに水分を取る」。ところが車中泊では、夜中にトイレへ行くのが面倒だから飲まない、という連鎖が起きがちです。順番が逆になっている。
夜間のトイレを片付ける道具立ては車中泊の携帯トイレは回数でなく1回の吸水量で選ぶにまとめました。2,000円のソックスより、そちらのほうが効きます。

3. 脚を伸ばして寝られる人

そもそもの原因は狭い座席です。
フルフラットにできる車で、段差も傾斜も潰して寝ているなら、6項目の条件のうち「狭い座席」が外れます。段差・隙間・傾斜の潰し方は車中泊のフラット化は段差・隙間・傾斜を別々に潰すへ。

4. ガイドラインが禁忌に挙げている状態の人

これは買わない理由というより、買う前に医療機関で聞く理由です。ガイドラインの表3にある圧迫療法の禁忌(絶対的禁忌)は10項目。抜粋にせず、全部そのまま置きます。

  1. 重症心不全(NYHA心機能分類Ⅳ)
  2. 高度下肢動脈疾患(ABI<0.5)
  3. 高度末梢神経障害
  4. 急性かつ広範囲皮膚・皮下組織感染症
  5. 圧迫材料に対する確認されたアレルギー
  6. 広範囲な急性血栓性静脈炎
  7. 有痛性青股腫
  8. 中枢型急性深部静脈血栓症(IPCの場合)
  9. 不安定な高度高血圧症
  10. 圧迫療法に同意が得られない患者

7番の有痛性青股腫は、この記事のテーマのすぐ隣。ガイドラインは別の節でこう書いています。

広範囲に及ぶDVTでは動脈虚血を伴う(重症の)有痛性青股腫が稀ながら発症する。この場合,圧迫療法は病状をさらに悪化させる可能性があり,注意が必要である。

血栓が怖いから履く、という発想のすぐ先に、履くと悪くなる状態がある。だからこの章は削れません。

メーカー側も同じことを書いています。アンシルク・2とアンシルク・3の商品ページ、どちらも同じ文面です。

【禁忌・禁止】 次の患者には使用しないこと 1) 重度の動脈血行障害、うっ血性心不全及び有痛性青股腫の患者。[圧迫により症状を悪化させる危険性が高いため。] 2) 化膿性静脈炎の患者。[菌血症や敗血症を発症、増悪させるおそれがあるため。] (Amazon.co.jp・アルケア アンシルク・2とアンシルク・3の商品ページ「商品紹介」・2026年8月30日閲覧)

同じページには「専門医の診断・指示なしに弾性ストッキングを購入・使用した場合、身体に影響を与えるおそれがあります」とも書いてあります。

慎重適応(相対的禁忌)の側には、高度心不全(NYHAⅢ)、下肢動脈疾患(0.5≦ABI<0.9)、糖尿病性神経障害、下肢バイパス術後、ギプス固定を伴う下肢外傷などが挙がっています。
自分がどれに当たるかを商品ページで判断することはできません。持病がある人・脚の手術を受けたことがある人は、旅の前にかかりつけで一言確認してください。

損益分岐も置いておきます

アンシルク・1が約2,933円。手洗いなので予備を持つなら2足で約5,900円。
年に5泊の車中泊で使うなら1泊あたり約590円、年に2泊なら約1,470円です。
一方、厚労省の6項目は6つとも0円でできます。この記事のいちばん安い答えは、ソックスではなく「4時間ごとに車を降りる」という運転計画です。

洗い方が製品でばらつく。そして丸まりがいちばん怖い

買ったあとに面倒になる点を先に書きます。

まず洗濯。同じ棚の製品でも、指示が割れる。
アンシルク・1とアンシルク・3の商品ページは取り扱いを「手洗いのみ」、VENOFLEXのFAST AIRは「洗濯機洗い」としています。手洗い指定の製品を車中泊に持っていくと、旅先で洗う手段が消えます。
乾きも早くはありません。ナイロンとポリウレタンの厚手の編み地で、車内に干せば結露のもとになる。2泊以上なら予備を1足。ここでコストが倍になります。

次に、いちばん怖い部分。ガイドラインはこう書いています。

圧迫療法で最も頻度の高い神経障害は腓骨頭における総腓骨神経麻痺である1)。総腓骨神経麻痺は,弾性ストッキング(特にハイソックスタイプ)6,7),間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression:IPC)のAEsとして報告されている

原因についても、同じ節にはっきり書いてある。文を切らずに引きます。

弾性ストッキングによる障害の原因は,不適切なサイズ選択,ストッキング上端のずれおよび/または丸まり等による締め付けであり,術中にIPCと併用する場合に発生しやすい 1)。

後半は手術室の話。名指しされているのは、術中にIPCを併用する場面です。ガイドラインが挙げている患者側のリスクも「脳卒中などによる意識障害,知覚低下,麻酔後の感覚低下,糖尿病性神経障害,るい痩」で、健康な人が車で寝る場面とは違います。

それでも前半の3つは、売り場で買って自分で履く人にそのまま当てはまります。不適切なサイズ選択、上端のずれ、丸まり。
上端が膝の裏あたりでくるくる巻き上がった状態は、そこだけ細いゴムで縛っているのと同じ。ガイドラインが図1で「上縁のずり落ち・シワ」と「腓骨神経の走行」を並べているのは、この形です。
だから軸3を先に置きました。足首まわりを測ってサイズを合わせること。夜中に目が覚めたら、上端がめくれていないか手で撫でて直すこと。この2つだけは面倒でもやってください。

軽いほうの副作用も知っておくと落ち着きます。ガイドラインの有害事象の表では、かゆみ・発赤・乾燥といった皮膚炎が「多い」、アレルギー皮膚反応が「非常に少ない」と整理されています。かゆくなったら、素材を変えるか圧を下げるか。我慢して履き続ける道具でもない。

そして寿命。編み地のポリウレタンは伸びます。
医療の現場では定期的に交換しますが、年に数泊しか使わない車中泊では、劣化より先に「去年どこにしまったか忘れる」ほうが問題になる。買った日をタグに書いて、寝袋と同じ袋に入れておく。これだけで来年の自分が助かります。

早朝の道の駅の駐車場。開いたスライドドアの外に置かれたスニーカーと、その先へ続く舗装路
7ヶ条の1番目は「4〜5時間ごとに歩く」。靴を出しやすい位置に置いておく

同じ道具が、9月の連休と台風の夜の両方で効く

今日8月30日から9月5日は防災週間です。
冒頭で引いた厚労省の事務連絡は、「本日の地震」の当日に避難所へ向けて出された紙です。この話の本来の現場は避難の車中泊でした。連休の観光と、台風で家に戻れない夜。姿勢と時間は同じです。

だから、買ったソックスは車に積みっぱなしにしておく。
置き場所は車のシート下です。非常持ち出し袋に入れると、袋ごと家に残ります。
車を避難先として使う考え方そのものは、キャンピングカーは「動く防災シェルター」にまとめてあります。

座って寝る夜がある人は買う、脚を伸ばせる人は見送る

線引きはかんたん。

買っていい人。 運転席や助手席を倒しただけの姿勢で寝る夜が、年に何度もある人です。まず足首を測る。そのうえでアルケアのアンシルク・1 ハイソックスを約2,933円で1足。足首19hPa=14mmHgで、ガイドラインの軽度圧迫圧の中に収まります。手洗い指定なので、連泊するなら2足。
mmHgの表示をそのまま信じたい人は、VENOFLEX FAST AIR ハイソックスが約5,324円。15〜20mmHgと商品名に出ていて、換算の手間がありません。

ただし、どちらも医療機器です。 アルケアは自社の説明ページに「圧迫圧選定の際は、必ず医師の指導を受けてください」と書いています。持病がある人、脚の手術を受けたことがある人、上の禁忌10項目に心当たりがある人は、買う前にかかりつけへ。わたしがここで示せるのは、候補の絞り方までです。

見送っていい人。 脚を伸ばして寝られるなら、要りません。4〜5時間ごとに車を降りて歩ける人も同じ。
圧の数字が書かれていない商品しか見つからなかったときも、そこで買わないでいい。上位30件のうち23件が数字を出していない売り場です。 書いてある側から選べばすみます。

最後に、書けていないことを2つ残します。
ひとつは、車中泊の姿勢そのもので下肢の血流がどれだけ落ちるかの実測データ。今回は飛行機や病床の研究しか見つけられませんでした。
もうひとつは、旅脚ハイソックスとメディキュットのメーカー公式サイトの記載で、どちらもわたしの環境からは公式ページを取得できず、商品ページの数値を使っています。公式の値が確認でき次第、この記事に足します。

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日向あかり

キャンピングカージャーナルのギア担当。ソロキャンプ歴7年。道具を買う前に何時間もスペック表を見比べるのが好きで、気づけばギアが増えているタイプ。カタログの定格値ではなく、実際に効いてくる数字(重さ・収納サイズ・消費電力量)で比べます。買う理由と同じだけ、買わなくていい理由も書きます。