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10月の道の駅。軽バンの荷室で、6時に肩が痛くて目が覚める。マットは10cm厚に替えた。シュラフも替えた。残っているのは枕だけ。家では合っていたはずの枕を積んできたのに、車の中では首の後ろが浮いています。
わたしの結論を3行で置きます。買うなら、寝る場所で高さを変えられる枕にしてください。薦めるのはサーマレストのコンプレッシブルピロー シンチ R(46×33cm、325g、2026年8月17日時点で5,203円)。高さが1つに固定された枕は、車の寝床では毎晩ずれます。年に2泊以下の人は買わなくていい。バスタオル2枚で足ります。
家の枕が車で合わないのは、枕のせいではない
家のベッドは水平です。マットレスの沈み方も毎晩同じ。だから枕の高さを一度合わせれば、翌週もそのまま使えます。
車は毎晩ちがいます。停める場所の傾き、下に敷いたマットの厚み、そのときの空気の入り具合。同じ枕を同じ向きに置いても、頭の高さは同じになりません。
枕の高さは、こう考えると見通しがよくなります。
実効高 = 枕のカタログ高さ − 肩がマットに沈んだ分 − 頭側が下がった分
引く数が2つあります。この2つが車内だけの事情で、家ではどちらもほぼゼロ。だから家の枕が合わない。原因は枕の外にあります。

傾斜だけで、枕1個ぶんの高さが動く
引く数の2つめ、傾斜のほうから。
舗装された路面には、水を流すための勾配がついています。道路構造令(昭和45年政令第320号)第24条第1項の本文はこうです(e-Gov法令検索・2026年8月17日閲覧。引用は原文どおりで、ふりがなだけ省きました)。
車道、中央帯(分離帯を除く。)及び車道に接続する路肩には、片勾配を付する場合を除き、路面の種類に応じ、次の表の下欄に掲げる値を標準として横断勾配を付するものとする。
同条に続く表で、舗装道の欄は「一・五以上」「二以下」。1.5%から2%です。
念のため書いておくと、この条文が直接おさえているのは車道で、駐車ますは対象の外にあります。ただ、舗装面から水を逃がすために勾配をつける、という考え方は同じ。桁の見当をつけるには足ります。
寝床の長さを180cmとして計算します。勾配1.5%なら2.7cm、2%なら3.6cm。頭からつま先までで、それだけ高さが変わる。
この3.6cmが大きいのかどうかは、ある実験と並べると見えてきます。千葉工業大学の田畑友浩らが2008年の日本人間工学会大会で発表した「寝姿勢を考慮した枕の機能条件に関する研究」。その方法欄に、評価に使った高さの段階が書かれています(J-STAGEで全文公開・2026年8月17日閲覧)。
仰臥位は、枕なしと2〜6㎝、側臥位は、枕なしと5〜10㎝の段階毎に評価。被験者は学生16名(21歳〜27歳)。
仰向けで振った幅が2cmから6cm、つまり4cmです。寝床の傾きだけで、その4cmの7割から9割を食う。枕を1cm刻みで選び分けても、頭を置く向きひとつでその努力は消えます。
だから最初にやることは、枕を選ぶことではありません。頭をどちらに向けて寝るかを決めることです。
マットが厚いほど、枕は低くなる
もうひとつの引く数、沈み込み。
同じ研究のまとめには、こう書かれています。
マットレスと枕を一体に捉える事の必要性と、寝姿勢で枕の高さは変える意味を明らかにした。
マットと枕はセットでしか決まらない、ということです。理屈も単純で、肩は頭よりずっと重い荷重をマットにかけます。仰向けなら背中と腰、横向きなら肩の一点。沈むのは体のほうで、枕は頭の重さぶんしか沈みません。厚くて柔らかいマットほど、この差は開きます。
車中泊のマットは厚さ2cmから10cmまであります(車中泊マットをR値で選ぶ記事に6製品の実数を並べました)。シートの段差を埋めるために10cm厚を選んだ人は、そのぶん肩が深く沈んでいる。同じ枕でも、2cmのマットの上と10cmのマットの上では別の高さになります。
枕そのものも沈みます。これはメーカーが認めている。ロゴスのセルフインフレートまくらの公式スペックは「サイズ:(約)幅40×奥行30×高さ7~12cm」で、その下に注記があります(ロゴスショップ公式オンライン・2026年8月17日閲覧)。
※サイズは空気の入れ具合により大きく変わります。
高さ7cmから12cm。同じ製品で5cmの幅があります。カタログの高さは、そもそも幅を持った数字です。
わたしが見る軸は3つ
軸1|高さを変えられるか。硬さ調整とは別物
商品ページに「調整可能」と書いてあっても、変わるのが高さとは限りません。ここを見る理由は、傾斜も沈み込みも現地に着くまで分からないからです。
DODのソトネノマクラ2は、公式サイトの特徴欄に「空気量で「硬さ」調整が可能」と掲げたうえで、その説明をこう締めています(DOD公式・2026年8月17日閲覧)。
※高さ調整機能はありません。
サーマレストのコンプレッシブルピロー シンチも同じでした。公式の製品説明は “Once unpacked, simply pull the cinch cord to adjust the firmness to your desired level.”(Therm-a-Rest公式・同日閲覧)。firmness、つまり硬さです。
高さそのものが動くと書いてあるのは、空気を入れる方式のほうでした。ロゴスの7〜12cm、シートゥサミットのエアロウルトラライトは “Offers customisable comfort with up to 11cm thickness and adjustable firmness”(Sea to Summit公式・同日閲覧)。11cmは上限で、そこから空気を抜いて下げていく。
初めて泊まる場所へ行く日は、わたしなら空気式を持ちます。ただし常用で薦めるのは別の1つで、理由は次の2つの軸にあります。
軸2|横を向いたとき、頭が落ちない幅か
さっきの研究が振った高さは、仰向けが2〜6㎝、横向きが5〜10㎝でした。範囲がほとんど重なっていません。結果についても「仰臥位と比べて、側臥位は枕の高さが必要となり、寝姿勢によって、よい高さは異なる」と書かれています。
車の寝床は狭い。狭ければ横向きが増えます。そして横向きは、枕から頭が落ちやすい姿勢でもある。ここを見る理由は、幅の足りない枕だと夜中に2回起きるからです。
比較表の使用時サイズを見比べてください。シートゥサミットのエアロウルトラライトが34×26cm、サーマレストのシンチRが46×33cm。長辺で12cmちがいます。
軸3|斜面で滑らないか
滑るかどうかは、3社の公式説明を並べると見えてきます。
コールマンは商品説明に「表面は肌触りが良く滑りにくいピーチ加工」と書いています(コールマン公式オンラインショップ・2026年8月17日閲覧)。シートゥサミットは製品説明で “Its scalloped base and included PillowLock System system keep it securely in place all night.”(同社公式・同日閲覧。原文の “System system” という重なりもそのままです)。Hikentureは商品名に「滑り止め」を入れ、説明文に「下には滑り止めラバーが付いており、安眠の間に枕が動きづらいようにできます。」と書いている(Amazonの商品ページ・同日閲覧)。
3社が別々の言葉で同じ対策を書いている。枕が滑るのは製品との相性ではなく、この道具に共通した弱点です。斜めの床で寝る車中泊なら、なおさら効いてきます。
寝る前の5分でやること
順番があります。
ひとつ、傾きを測る。iPhoneなら計測アプリの水準器で足ります。アップルのユーザガイドは「iPhoneを使って、近くにあるオブジェクトが水平(地面と平行)であるか、水平から何度ずれているかを確認できます(計測結果はおおよそです)」と書いています(Appleサポート・2026年8月17日閲覧)。おおよそで十分。1度なのか2度なのかが分かればいい。
ふたつ、頭を高いほうへ向ける。1度の傾きは、180cmで3.1cmの高低差になります。逆向きに寝ると、この3.1cmを枕で埋め直す仕事が増える。
みっつ、マットを敷いて、実際に寝てみる。枕を置くのはここから。
よっつ、横から見てもらう。同行者がいるなら、首の後ろが浮いていないかを見てもらってください。ひとりなら、スマホを立てて動画を撮る。
いつつ、空気を抜くか足すか、中身を寄せるか。左右どちらの横向きでも確かめます。
ヘッドレストを外して寝床を作る人へ。道路運送車両の保安基準第22条の4第1項が頭部後傾抑止装置の装備を求めているのは「運転者席及びこれと並列の座席」です(e-Gov法令検索・2026年8月17日閲覧)。寝る前に外して、走る前に戻す。手順に組み込んでおくと忘れません。

枕6点を実数で並べる
2026年8月17日に、メーカー公式ページとAmazonの商品ページを開いて数字を書き写しました。価格も星の数も同日時点です。
| 製品 | 使用時サイズ | 高さの変わり方 | 重量 | 収納サイズ | 星・件数 | 価格(8/17時点) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サーマレスト コンプレッシブルピロー シンチ R | 46×33cm・厚さ15cm(公式) | ドローコード。公式の言葉はfirmness | 325g(公式) | 公式に記載なし | 4.3・1,442件 | 5,203円 |
| シートゥサミット エアロウルトラライトピロー レギュラー | 34×26×11cm(公式) | 空気量。上限11cm | 57g(公式) | 7×6.5×6.5cm(公式) | 4.4・1,340件 | 5,720円 |
| DOD ソトネノマクラ2 | W48×D32×H11cm(公式) | 硬さのみ。高さ調整機能なしと公式が明記 | 490g(公式) | L34×Φ12cm(公式) | 4.3・6件 | 4,043円 |
| コールマン コンパクトインフレーターピロー II | 48×31×9cm(公式) | 記載なし。自動膨張式 | 280g(公式) | φ10×32cm(公式) | 4.0・781件 | 2,391円 |
| ロゴス セルフインフレート まくら | 幅40×奥行30×高さ7〜12cm(公式) | 空気量。7〜12cmと公式が明記 | 235g(公式) | 直径8.5×長さ30cm(公式) | 4.1・336件 | 1,800円 |
| Hikenture キャンプ枕 滑り止め付き | 20×8cm(商品ページの表示のみ) | 空気量 | 150g(商品ページ) | 15×7cm(商品ページ) | 4.2・2,223件 | 1,990円 |

シンチ R

エアロUL

ソトネノマクラ2

コールマン II

ロゴス まくら

Hikenture
表を作って引っかかったのは、収納サイズがそろわないことでした。サーマレストのシンチは、公式のTech Specsに収納サイズの行がありません。押し込んで縮める構造なので数字にしにくいのだと思いますが、後席下に入るかどうかを知りたい側からすると困ります。
数字が2系統ある製品もあります。Amazonの日本正規品ページには「S – 12 x 16インチ」「0.44ポンド」という表示が残っていて、現行の公式Tech SpecsはSサイズが11×15インチ、8オンス。モデル年の違いとみられます。わたしは公式サイト側を採りました。
重量の幅も大きい。57gのシートゥサミットと、490gのDOD。8.6倍です。ただし車中泊で57gの軽さが効く場面は、ほとんどありません。荷物を背負って歩かないからです。車中泊の枕は、軽さより幅と滑りにくさを優先していい。登山用の枕選びと分かれるのは、この一点でした。
買わなくていい人
年に2泊以下なら、買わなくていいと思います。
バスタオルで足ります。60×120cmのタオル1枚、生地の厚みを5mmとして短辺側から丸めると、断面の直径はおよそ6cm。2枚まとめて丸めれば約8.7cmです(丸めた円の断面積が布の断面積と等しいとして、わたしが計算しました)。さきほどの研究が振った幅、仰向けの2〜6㎝と横向きの5〜10㎝に、ちょうど重なります。
しかも微調整が効く。きつく巻けば低く、ゆるく巻けば高い。現地で高さを変えられるという一点だけを見れば、バスタオルは空気枕と同じことができます。
畳む手もあります。60×120cmを4つ折りにして30×60cm、さらに半分にして30×30cm。厚みは8枚重ねで4cmです。仰向け用としては悪くない数字。
損益分岐はこうなります。サーマレストのシンチRは5,203円。年3泊なら1泊あたり1,734円、年10泊なら520円。バスタオルは0円です。年5泊を超えたあたりから、毎晩タオルを巻き直す手間に5,000円を払う気になるかどうか、という話になります。
衣類を袋に詰める手は、車中泊では薦めません。中身が夜中に動いて形が崩れるうえ、翌朝その服を着ることになるからです。
洗えるか、乾くか、息は何回か
買ったあとに面倒になる点を3つ書いておきます。
洗濯から。DODのソトネノマクラ2はポリコットンのカバーが外れて洗えます。サーマレストのシンチは、Amazonの商品情報に「洗濯機洗い」の表示。空気枕はカバーだけ洗える製品が多く、Hikentureはカバーを引き抜いて本体と分離する構造です。
次に乾き。カバー付きの枕は、洗ったあと乾くまでベランダを半日使います。連泊の途中で洗う選択肢はありません。
そして、膨らませる手間。空気枕は口で吹き込みます。Hikentureの商品ページには「3~5回ほど息を吹き込むと、簡単にエアーピローを完成です!」とある。この息には水蒸気が混じっていて、閉め切った車内では無視できない足し算になります(一晩に車内へ出る水の量は車中泊の結露の記事に書きました)。
撤収の時間も差が出ます。空気を抜いて丸めるだけなら30秒。フォーム系は空気を押し出しながら袋へ詰めるので、もう少しかかる。そのかわり、穴が開く心配がありません。
買う人と、見送る人
年5泊以上、後席を倒して2泊以上する人はサーマレスト コンプレッシブルピロー シンチ R。46×33cm、325g、5,203円。幅があって滑りにくく、空気を入れる手間がない。傾斜は枕で埋めず、頭の向きで逃がす。そういう考え方の1枚です。
収納の小ささを最優先するならシートゥサミット エアロウルトラライトピロー。57gで、収納は7×6.5×6.5cm。空気量で上限11cmまでのあいだを動かせます。
年2泊以下の人と、寝床を完全に水平にできる人は見送っていい。バスタオル2枚で足ります。
この記事で書けていないのは、マットの沈み込み量そのものです。厚さと硬さと体重から何cm沈むのかを、公表値だけで計算できる製品が見つかりませんでした。ウレタンの硬さを数字で出しているマットが少ない。製品側のデータがそろったら、ここは書き足します。
寝袋の温度で迷っている人は車中泊のシュラフを快適使用温度で選ぶ記事へ。枕はそのあとで構いません。まずは今夜、寝床に水準器を当てるところから始めてください。




