車中泊中のアイドリングは、筆者が条文を確認できた範囲で11都府県が条例上の義務として禁じている。マナーの問題にとどまらない。しかも「車内が暑い・寒いから」という理由は、条文上の除外事由に原則として入らない。

この記事の結論
- 筆者が2026年8月18日に条文・自治体公表資料で確認できた範囲では、11都府県が運転者に原動機の停止を義務づけていた(千葉・埼玉・東京・神奈川・静岡・愛知・京都・大阪・兵庫・岡山・広島)。文末の表現は「原動機を停止しなければならない」「行わなければならない」など自治体で異なる。
- 罰則は自治体で分かれる。埼玉県は罰則なし(勧告・公表)で、岡山県は5万円以下の過料を置いた。兵庫県は10万円以下の罰金を置いたが、その罰則条項は「人が乗車しているとき」を対象から除いており、車中泊そのものに罰金は及ばない(罰則のない第72条第1項が残る)。
- 「車内の冷暖房のため」は除外に入らない。 大阪府の条例は「運転者室及び客室」の、神奈川県の施行規則・静岡県・兵庫県の条例は「客室内」の冷暖房装置を、除外される附属装置から明示的に外している。
- ただし生命に関わる場面は別枠で除外されうる。埼玉県は「人の生命、身体に危害が及ぶおそれがある場合」、東京都は「熱中症による生命の危険が生じるおそれがある中で、運転者が自動車から離れることができないなどやむを得ない事情がある場合」、岡山県は「冷暖房の不使用により運転手等の健康に支障が生じるような状況」を、それぞれ除外の例として公表している。
- 条例の停止義務は駐車全般に掛かり、車内にいる場合も車を離れる場合も対象になる。一方で道交法第71条第5号が原動機の停止を求めるのは「車両等を離れるとき」だけであり、条例の射程の一部と重なるにすぎない。
- 確認できたのは47都道府県のうち25都道府県で、残る22県は未確認である。規定がないことを意味しない。
本記事は条文と自治体の公表資料を整理したものであり、法律相談ではないと先に断っておく。個別の判断は各自治体の窓口(後述)へ照会してほしい。
この記事が扱う層を先に区切る
車中泊でエンジンをかけてよいかという問いには、性質の違う3つのルールが重なっている。混ぜて読むと必ず矛盾した。
| 層 | 誰が決めるか | 破ったときに起きること | 本記事の扱い |
|---|---|---|---|
| ①施設のルール | 道の駅、SA/PA、RVパーク、コインパーキングの管理者 | 退去要請、以後の利用制限 | 別記事で扱う |
| ②自治体の条例 | 都道府県・市町村 | 指導、勧告、公表。自治体により過料・罰金 | 本記事の主戦場 |
| ③道路交通法 | 国 | 反則金・罰金・点数 | 本記事で境界だけ示す |
①については既に別記事で整理した。道の駅の可否は道の駅で車中泊は禁止か|仮眠と宿泊の境界線を、高速道路上の扱いはサービスエリアで車中泊は禁止?を参照してほしい。本記事は②の条例に絞る。
施設の看板に「アイドリング禁止」と書かれている場合、多くはそれが条例で駐車場設置者に課された周知義務の履行にあたる。千葉県は収容能力20台以上または面積500平方メートル以上の駐車場設置者・管理者に対し、看板の掲示等による周知を義務づけた。看板は条例の出先だと考えたほうが実態に近い。
「駐車」の定義を押さえると、車中泊が対象に入る理由が分かる
条例の停止義務は、ほとんどが「駐車をするとき」に発動する。そしてその「駐車」は、道路交通法第2条第1項第18号の定義を引き写している場合が多い。e-Gov法令検索で取得した条文はこうなっていた。
車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。 (道路交通法第2条第1項第18号)
車内で寝ている状態は、後段の「その車両等を離れて直ちに運転することができない状態」に当たる。車から降りていなくても、シートを倒して寝袋に入っていれば直ちに運転はできない。したがって車中泊は法令上の駐車に当たり、条例の停止義務が及ぶと解される。「車内にいるから停車扱いだ」という理解は成り立たない。
大阪府はこの点を具体的な問答として公表した。
Q7.空き地に車を停止し、継続的にアイドリングをしながら仮眠又は時間待ちをしている場合は対象となりますか? A7.空き地の場合でも違反になります。 (大阪府「アイドリングストップについてよくある質問」)
私有地の空き地であっても違反になると府が明言している。駐車場かどうか、公道かどうかは関係がない。
一次情報で確認できた25都道府県
47都道府県すべてに当たったが、条文または当該自治体の公表資料で条項の有無と文末まで確認できたのは25都道府県だった。残る22県は筆者が確認できていない県であり、規定の不存在を意味しない。この区別は記事の信頼性に直結するため、そのまま書く。
運転者に停止義務がある(11都府県)
| 都道府県 | 根拠 | 規定の文末(出典の別) | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 千葉県 | 千葉県環境保全条例 | 駐車又は停車するときのエンジン停止を義務付け(県広報文) | 記載なし |
| 埼玉県 | 埼玉県生活環境保全条例 | 行わなければならない(県広報文の条例引用) | なし(勧告・公表) |
| 東京都 | 環境確保条例 | 義務があります(都広報文) | 勧告・公表 |
| 神奈川県 | 生活環境の保全等に関する条例 第94条 | 原動機を停止しなければならない(条文) | 勧告・公表 |
| 静岡県 | 生活環境の保全等に関する条例 第105条 | 原動機を停止しなければならない(条文) | 未確認 |
| 愛知県 | 県民の生活環境の保全等に関する条例 第77条 | アイドリングが原則禁止(県広報文) | 勧告・公表(事業者・駐車場設置者等) |
| 京都府 | 京都府地球温暖化対策条例 第34条 | 行わなければならない(条文) | 未確認 |
| 大阪府 | 生活環境の保全等に関する条例 第41条の2 | 原動機を停止しなければならない(条文) | 勧告(事業者・駐車場管理者に対して) |
| 兵庫県 | 環境の保全と創造に関する条例 第72条 | 1項「みだりに稼動させてはならない」(罰則なし)/2項「原動機を停止しなければならない」(条文) | 10万円以下の罰金(第164条)※人が乗車していないときに限る |
| 岡山県 | 環境への負荷の低減に関する条例 第93条 | 原動機を停止しなければならない(条文) | 5万円以下の過料(第129条) |
| 広島県 | 生活環境の保全等に関する条例 | しなければなりません(県広報文) | 未確認 |
対象の広さは自治体で分かれた。確認できた11都府県のうち千葉県・埼玉県・東京都・京都府は「駐車又は停車」まで対象に含めており、神奈川県・静岡県・大阪府・岡山県・広島県は駐車のみを対象としている。愛知県は「駐停車中にエンジンをかけっぱなしにすること」をアイドリングと定義した。もっとも車中泊は前述のとおり駐車に当たるため、どちらの型でも義務は掛かる。
努力義務にとどまる県と、そのほかの類型
- 努力義務(6県):茨城県(第106条)、栃木県(第59条)、石川県(第244条)、和歌山県(第16条)、香川県、徳島県。条文の文末は「努めなければならない」または「努めるものとする」。
- 中間型(1県):鳥取県は地球温暖化対策条例第13条(駐停車中のエンジン停止)で、駐車または停車中は「当該自動車等のエンジンを停止するものとする」と定めた。
- 駐車場管理者にだけ義務(2道県):北海道と滋賀県は、駐車場管理者への周知義務は課したが、運転者側は取組・努力の位置づけだった。
- 条項の存在のみ確認(2県):群馬県(第112条)と三重県。文末までは照合できていない。
- 個別条項を確認できず(3県):山梨県・島根県・富山県。条例本文または県の公式ページを取得した限りでは見当たらなかった。
未確認の22県
青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・新潟・福井・長野・岐阜・奈良・山口・愛媛・高知・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄。
この22県について、本記事は「規定がない」とは書かない。条文の取得に失敗した県、条例名の候補までしか絞れなかった県が含まれる。集計の生データと個別の出典URLはすべて記録に残した。

核心:「冷暖房のため」は除外に入らない
ここが検索上位の記事のほとんどが触れていない部分である。多くの条例は「貨物の冷蔵装置その他の附属装置の動力として使用する場合」を除外した。冷凍車やミキサー車を止めないための規定だ。ところがその括弧書きで、車内の冷暖房装置がわざわざ除かれている。
自動車の原動機を貨物の冷蔵装置その他の付属装置(自動車の客室内の冷房又は暖房を行うための装置を除く。)の動力として使用する場合 (神奈川県生活環境の保全等に関する条例施行規則 第86条第2号)
大阪府の条例も同じ構造を持つ。
自動車の原動機を貨物の冷蔵装置その他の附属装置(道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令第六十七号)第二十条第三項に規定する自動車の運転者室及び客室における冷房又は暖房を行うための装置を除く。)の動力として使用する場合 (大阪府生活環境の保全等に関する条例 第41条の2第1項第2号)
同趣旨の括弧書きは静岡県(第105条第1項第4号)と兵庫県(第72条第2項第1号)にもある。ただし両県の文言は「客室内の冷房又は暖房を行うための装置」であり、運転者室まで併記しているのは大阪府の条文と千葉県の広報文だけだった。千葉県は県の公式ページで「付属装置の動力として使用する場合(運転者室などの冷暖房を除く)」と平易に書いている。愛知県はさらに踏み込み、「駐車中のアイドリングが禁止される例」の一つとして「駐停車中の車内の冷・暖房のためのアイドリング」を名指しで挙げた。
つまり立法者は、冷暖房目的のアイドリングを除外から外すことを意図して条文を書いた。「エアコンのためだから附属装置に当たる」という読み方は、条文が先回りして塞いでいる。
大阪府はこの点も問答で確定させた。
Q14.厳寒期や猛暑の炎天下で、やむを得ず自動車を止めて(駐車して)客待ち等で待機する場合においても、暖房又は冷房のためのアイドリングは条例違反になりますか? A14.駐車中のアイドリングについては、第41条の2第1項ただし書の場合を除き、条例違反になります。但し、厳寒期、盛夏期等については、条例の適用について一定の配慮を行います。 (大阪府「アイドリングストップについてよくある質問」)
違反であることを認めたうえで、運用として配慮すると述べている。違反に当たらないと述べたわけではない。
ただし生命・身体に危害が及ぶおそれのある場面は別枠で除外されうる
条例の多くは除外事由の最後に受け皿を置く。ただしその形は自治体で分かれた。埼玉県・神奈川県・東京都は「その他やむを得ないと認められる場合」と開いているのに対し、静岡県は条例第105条第1項第6号を規則に委ね、施行規則第50条が「傷病者の救護のために自動車等の原動機を当該自動車等の客室内の冷房又は暖房を行うための装置の動力として使用する場合」と「災害時において自動車等の給電装置を使用するために当該自動車等の原動機を稼働させる場合」の2件に限定している。兵庫県と岡山県も受け皿を「規則で定める場合」とした。以下は、受け皿を開いている自治体が公表した解釈である。
埼玉県は次の3つを挙げた。
・急病人に対する措置や火災、震災時等の緊急を要する事態に対応する場合 ・病弱者や障がい者が身体を健全な状態に維持するために必要な室温に車内の温度調整をする場合 ・人の生命、身体に危害が及ぶおそれがある場合 (埼玉県「アイドリング・ストップに関するよくある質問」Q2)
東京都はさらに具体的である。
③熱中症による生命の危険が生じるおそれがある中で、運転者が自動車から離れることができないなどやむを得ない事情がある場合。ただし、必要な時間に限るとともに、近隣住民等に十分配慮した場所とする必要があります。 (東京都環境局「アイドリング よくあるご質問」)
岡山県は、該当しうると認めたうえで釘を刺した。過料を実際に置いている唯一の県なので、両方を引く。
運転手等が車内で待機する必要があり、冷暖房の不使用により運転手等の健康に支障が生じるような状況下でのアイドリングは、アイドリングストップ義務の適用除外を規定した「やむを得ない事情があると認められる場合」に該当するケースと考えられます。 (岡山県「自動車公害対策」)
そのうえで、同じページは次のように続けた。
なお、「やむを得ない事情」に該当するかについては、個別の事情に応じて総合的に判断するものであり、一律に適用が除外されるものではありません。 (岡山県「自動車公害対策」)
解釈を公表した3自治体の書きぶりを並べると、境界は見えてくる。健常者が「快適に眠りたい」という理由は除外に入らない。生命の危険が現に生じるおそれのある局面は入りうる。 ただし東京都の例示は、運転者が自動車から離れることができないという事情を前提にしたうえで「必要な時間に限る」「近隣住民等に十分配慮した場所とする」という制約を付けた。一晩中つけっぱなしという運用は、この文言の外にある。静岡県のように除外を規則で2件に限定した県では、この読み方はそのまま通らない。
ただし、現に生命の危険を感じる状況で条例を優先する必要はない。まず安全を確保し、可能なら空調のある場所へ移動する。
なお、この解釈は自治体が個別に判断するものであり、本記事は法律相談ではない。実際の判断に迷う場面では、後述の窓口へ照会するのが確実だ。
結論が変わる境界値
条文と自治体の公表資料から、判断が切り替わる線を抜き出すとこうなる。
| 境界 | 手前 | 超えると |
|---|---|---|
| 継続5分(車を離れない待機の場合) | 大阪府は5分以内を規制対象と説明していない | 5分を超えると規制の対象(大阪府Q6・Q8・Q10)。就寝中は駐車の定義の後段に当たるため、時間にかかわらず対象になる |
| 車内に人がいるか(兵庫県のみ) | 人が乗車中は第72条第2項の対象外で、罰金は及ばない(罰則のない第1項は残る) | 無人になれば第2項が掛かり、10万円以下の罰金の射程に入る |
| 生命・身体の危険 | 「暑い・寒い」だけでは除外されない | 危険が生じるおそれがあれば除外されうる。ただし東京都の例示は運転者が車を離れられない事情を前提とし、必要な時間に限る |
| 駐車場の規模 | 規模に満たない駐車場は管理者の周知が努力義務 | 千葉県・埼玉県は20台以上または500平方メートル以上、東京都は20台以上、神奈川県・大阪府は500平方メートル以上、広島県は500平方メートル以上または40台以上で管理者に周知義務 |
| 車を離れるか | 車内にいても条例の停止義務は掛かる(道交法第71条第5号は適用されない) | 車を離れれば条例に加えて道交法上の停止義務も生じる(罰則=5万円以下の罰金) |
兵庫県の構造は独特なので補足したい。兵庫県条例第72条は第1項で「みだりに稼動させてはならない」と定め、第2項で駐車時の停止を義務づけた。罰金が掛かるのは第2項の違反だが、その第2項第1号は「当該自動車に人が乗車しているとき」を対象から除いている。車内で寝ている限り第2項の罰金の射程からは外れるものの、第1項の禁止は残ったままだ。
よくある誤解を3つ正す
誤解1「アイドリングはマナーの問題で、法的な決まりはない」
違う。少なくとも11都府県は条例で運転者に義務を課しており、条文や公表資料の文末はいずれも義務形(「しなければならない」「行わなければならない」など)だった。マナーとして呼びかけているのは、努力義務にとどまる県や条項を確認できなかった県の場合である。自分が泊まる県がどちらかを確認しないまま「マナーの範囲」と決めつけるのは、事実に反する可能性が高い。
誤解2「どこの条例も罰則がないから実質的に自由だ」
これも違う。埼玉県は「アイドリング・ストップ義務違反の場合、罰則はありません」と明記したが、これは埼玉県の話にすぎない。岡山県は条例第129条で5万円以下の過料を定めた。兵庫県も条例第164条で10万円以下の罰金を定めているが、その罰金が掛かる第72条第2項は「当該自動車に人が乗車しているとき」を対象から除いており、車中泊のように人が乗車している状態は罰則条項の外にある。罰則の有無と射程を全国一律だと考えると、瀬戸内側で判断を誤る。
埼玉県の場合も、罰則がないだけで無風ではない。「指導に従わない者に対して勧告・公表をすることができます」と県が公表しており、氏名の公表という手段が残されていた。
誤解3「エンジンをかけたまま寝るのは道路交通法違反だ」
これも違う。道路交通法第71条第5号が原動機の停止を求めるのは「車両等を離れるとき」に限られる。車内で寝ている限り「離れる」に当たらないため、この条項は適用されない。逆に、かけたまま少しコンビニに入る、トイレに行くという行為には適用され、5万円以下の罰金(第120条第1項第10号)が科されうる。
ただし条例のほうは違う。条例の停止義務は駐車全般を対象とし、車内にいる場合も車を離れる場合も掛かる。 千葉県が「こんな時にはアイドリング・ストップを!」の筆頭に「運転者が車から離れているとき」を挙げているとおりで、道交法の射程は条例の射程の一部と重なっている。道交法違反にならないことは、条例違反にならないことを意味しない。
原動機を止めて夜を越すための実務
条例の話をすると「では夏と冬はどうするのか」という問題が残る。原動機を止めたまま夜を越す手段は3系統ある。
電気で冷やす。 ポータブル電源とDC扇風機、あるいはポータブルクーラーの組み合わせになる。扇風機は消費電力が小さく、容量1,000Wh前後の電源でも一晩は問題なく回った。ポータブルクーラーは消費電力が一桁違うため、容量と稼働時間の関係を先に計算しておく必要がある。この計算はポータブル電源 車中泊の選び方にまとめた。
燃料で暖める。 FFヒーターは車両の燃料タンクから軽油またはガソリンを取り、排気を車外に出す方式であるため、走行用の原動機を止めたまま暖房が成立する。導入の判断基準は秋の車中泊の寒さ対策|FFヒーターは要るのかで扱っている。
そもそも熱を入れない、逃がす。 窓の断熱と換気の確保は電力を使わない。夜間の車内温度が命に関わる水準に達する条件については車中泊の熱中症対策に整理した。
もう一つ、装備で解けない場合は場所を変えるという選択がある。電源付きのRVパークを使えば外部電源から電気毛布もクーラーも動かせるうえ、そこは宿泊を前提に設計された施設であるため、周囲への配慮の問題も小さい。

冬は「かけっぱなし」がもっと危険になる
積雪地では、条例以前の問題としてアイドリングそのものが致命的になりうる。マフラーが雪で塞がれると排気が車内へ回り込み、一酸化炭素中毒を起こす。JAFのユーザーテストが数値を公表している。
2015年2月16日に実施された比較では、同じ条件の車2台を始動させて車内のCO濃度をガス検知器で計測した。対策をしない車は、開始直後から濃度が上がり、16分後に短時間暴露限度の400ppmに達し、その後6分で測定上限値の1,000ppmに到達した。一方、マフラー周辺を除雪した車では、終始COがほとんど検知されていない。窓を5cmほど開けたケースでも、約40分後に400ppmへ上昇し、その後すぐ800ppm台になっている。ただしJAFは「車の周囲の状況や風向き、エアコンの設定などで変わるため、今回安全だった条件でも危険になる場合があります」と留保を付けた。除雪すれば安全になるという読み方はできない。
国土交通省 北陸雪害対策技術センター(事務局:北陸地方整備局 北陸技術事務所)の「おしえて!雪ナビ」も「雪でマフラーが塞がれると一酸化炭素中毒の危険があります」と注意を促した。窓を少し開ければ大丈夫という理解は、JAFの計測結果と整合しない。降雪時に始動させたまま眠るのであれば、定期的にマフラー周辺を除雪し続けるしか手がなくなる。眠ってしまえばそれはできない。
手続きと問い合わせ先
条例の解釈で判断に迷ったとき、あるいは近隣のアイドリングに困ったときの窓口は、県庁の環境部局とは限らない。埼玉県は指導権限を各市町村へ順次移譲しており、相談先を市役所・町村役場と案内した。ただし蕨市は中央環境管理事務所、本庄市・深谷市は北部環境管理事務所が窓口になる。
相談する場合、埼玉県は「車両のナンバーや特徴等、違反者の特定につながるような情報」と「アイドリングをしている場所、日時」の提供を必須とした。漠然とした内容や匿名での相談は「ご希望に沿えないこともございます」と記されている。
自分が泊まる地域の扱いを事前に知りたい場合は、「〇〇県 アイドリング・ストップ 条例」で県の公式ページを開き、次の3点を見れば足りる。
- 運転者への規定の文末が「しなければならない」か「努めなければならない」か
- 除外事由に冷暖房装置の括弧書きがあるか
- 罰則の記載があるか
この3点で結論はほぼ決まる。
よくある質問
車中泊でエンジンをかけて寝ると、実際に取り締まられるのか
現場で即座に反則切符が切られる制度ではない。多くの条例は指導・勧告・公表という段階を踏む仕組みになっており、埼玉県は「指導に従わない者に対して勧告・公表をすることができます」と公表した。ただし岡山県は5万円以下の過料を条例に置いており、法的な制裁の枠組み自体は存在する。兵庫県の10万円以下の罰金は、罰則条項が「人が乗車しているとき」を対象から除いているため、車中泊そのものには及ばない。取り締まりの実例が少ないことと、違反でないこととは別の話だ。
暑くて眠れないときにエアコンをつけるのは違反になるのか
条例上は原則として違反になる。大阪府の条例は「運転者室及び客室」の、神奈川県の施行規則・静岡県・兵庫県の条例は「客室内」の冷暖房装置を、除外される附属装置から明示的に外した。ただし埼玉県は「人の生命、身体に危害が及ぶおそれがある場合」、東京都は「熱中症による生命の危険が生じるおそれがある中で、運転者が自動車から離れることができないなどやむを得ない事情がある場合」、岡山県は「冷暖房の不使用により運転手等の健康に支障が生じるような状況」を除外の例に挙げており、熱中症の危険が現に生じる状況は該当しうる。東京都の例示は運転者が車を離れられない事情を前提とし、「必要な時間に限る」「近隣住民等に十分配慮した場所とする」という条件が付く。
罰則がない県なら、朝までかけていても問題ないのか
法的な制裁がないだけで、義務違反であることは変わらない。埼玉県は罰則がないと明記する一方で、勧告と氏名の公表ができると述べている。加えて、施設側のルール(①の層)は条例とは独立に働く。道の駅やSA/PAの管理者から退去を求められる根拠は施設の管理権にあるため、罰則の有無とは無関係に成立した。
アイドリング禁止の看板がない駐車場なら、条例は適用されないのか
適用される。看板の掲示は駐車場の設置者・管理者に課された周知義務であり、運転者の停止義務とは別の条項だ。千葉県・埼玉県は20台以上または500平方メートル以上、東京都は20台以上、神奈川県・大阪府は500平方メートル以上の駐車場に周知義務を課しているが、その規模に満たない駐車場でも運転者の義務は変わらない。大阪府は空き地に停めた場合でも違反になると明言した。
キャンピングカーの発電機やFFヒーターも条例の対象になるのか
対象は自動車の原動機であり、走行用の原動機を回さずに動く独立した発電機やFFヒーターは、条例のアイドリング規定が想定する対象とは異なる。ただし発電機は騒音・排気の面で施設のルールに抵触することが多く、RVパークや道の駅では使用を禁じている施設が少なくない。条例をクリアしても施設のルールで止まる典型例であり、事前確認が要る。
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本記事は条文と自治体の公表資料を整理したものであり、法律相談ではない。「やむを得ない場合」に当たるかどうかは自治体が個別の事情に応じて判断するため、迷う場面では前掲の窓口へ照会してほしい。
更新日:2026年8月18日
出典
- 千葉県「アイドリング・ストップの義務」(更新日 令和6(2024)年12月12日) https://www.pref.chiba.lg.jp/taiki/jidousha/kisei/05idling-stop.html
- 埼玉県「アイドリング・ストップに関するよくある質問」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0504/aisuto-situmon.html
- 埼玉県「アイドリング・ストップ」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0504/jourei-jidousha/seikan-gaiyou.html
- 東京都環境局「アイドリング よくあるご質問」 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/vehicle/idling
- 東京都環境局「アイドリング・ストップについて」 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/vehicle/sgw/300500a20180425133703131/
- 神奈川県「神奈川県生活環境の保全等に関する条例(アイドリング・ストップ関係抜粋)」(更新日 2025年8月15日) https://www.pref.kanagawa.jp/docs/pf7/idling/zyourei.html
- 静岡県「静岡県生活環境の保全等に関する条例」(条例・規則二段書き) https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/838/nidangaki250624.pdf
- 愛知県「アイドリング・ストップについて」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/mizutaiki/idling-stop.html
- 京都府「京都府地球温暖化対策条例」 https://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a300RG00001692.html
- 大阪府「アイドリングストップに関する条文」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o120070/kotsukankyo/haigasu/idling_jyoubun.html
- 大阪府「アイドリングストップについてよくある質問」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o120070/kotsukankyo/haigasu/idling_qanda.html
- 兵庫県「アイドリング禁止規定の抜粋(環境の保全と創造に関する条例)」 https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/download_file/view/12693/21446
- 岡山県「自動車公害対策(県条例・自動車騒音の監視)」 https://www.pref.okayama.jp/page/267633.html
- 岡山県環境への負荷の低減に関する条例 https://www1.g-reiki.net/k_pref.okayama/reiki_honbun/o500RG00001144.html
- 広島県「自動車排出ガス対策について」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/eco/e-e7-car-index.html
- 茨城県生活環境の保全等に関する条例 https://www.pref.ibaraki.jp/somu/somu/hosei/cont/reiki_int/reiki_honbun/o400RG00001534.html
- 栃木県生活環境の保全等に関する条例 https://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e101RG00001399.html
- ふるさと石川の環境を守り育てる条例 https://www1.g-reiki.net/ishikawa/reiki_honbun/i101RG00001068.html
- 和歌山県地球温暖化対策条例 https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00001741.html
- 香川県「香川県生活環境の保全に関する条例で定める『自動車排出ガス対策』の概要」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/kankyokanri/kankyo-hozen/taikiseikatu/kisei/jidosya.html
- 徳島県庁コールセンター「アイドリングストップは,条例で規制されているのですか。」 https://www.pref.tokushima.lg.jp/FAQ/docs/00007832/
- 鳥取県地球温暖化対策条例 https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00001511.html
- 鳥取県「アイドリングストップの推進」 https://www.pref.tottori.lg.jp/320447.htm
- 北海道「アイドリングストップ」 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/zcs/idolingstop.html
- 滋賀県「自動車管理計画書制度」 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/ondanka/13582.html
- 群馬県「群馬県の生活環境を保全する条例の体系」 https://www.pref.gunma.jp/page/6892.html
- 山梨県地球温暖化対策条例 https://www.pref.yamanashi.jp/somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/a500RG00001388.html
- e-Gov法令検索「道路交通法」(法令ID 335AC0000000105) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
- JAF「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意(JAFユーザーテスト)」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/co-poisoning
- 「雪みちの備え|おしえて!雪ナビ」(国土交通省 北陸雪害対策技術センター/事務局:北陸地方整備局 北陸技術事務所) https://www.hrr.mlit.go.jp/hokugi/yukinavi/sonae/index.html
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