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「防災道の駅」に選ばれている駅なら、台風の夜に車で向かえば泊めてもらえる。検索結果を眺めているとそう読めてしまいますが、制度の文言はそうなっていません。
国土交通省が選定する防災道の駅は、2025年5月14日に40駅が加わって全国79駅になりました。国土交通大臣が指定する防災拠点自動車駐車場は、2026年4月15日の追加で535カ所です。数は増えていますが、どちらも住民が車で避難してよい場所を国が決めた制度ではありません。
今日8月30日は防災週間の初日です。車を避難先に考えているなら、開くべきなのは国交省の指定一覧ではなく、住んでいる市町村の防災ページのほうです。
79駅と535カ所は、別の制度の数字
名前が似ているので混ざりますが、この2つは決め方も根拠も違います。
| 防災道の駅 | 防災拠点自動車駐車場 | |
|---|---|---|
| 決める主体 | 国土交通省が選定 | 国土交通大臣が指定 |
| 現在の数 | 79駅 | 535カ所(道の駅389、SA・PA146) |
| その数字の時点 | 2025年5月14日 | 2026年4月15日 |
| 根拠 | 都道府県の地域防災計画等での位置づけ | 道路法(2021年改正で創設) |
| 中身 | 交付金やBCP策定の重点支援(最大5年) | 災害時に一般利用を止める権限 |
防災道の駅の選定要件は具体的です。まず、都道府県の地域防災計画か受援計画に広域的な防災拠点として書かれていること。駐車場は2,500平方メートル以上が必要で、建物の耐震化、無停電化、通信と水の確保も条件に入ります。市町村と道路管理者の役割分担を定めたBCPも要ります。
全国の道の駅は1,231駅(2025年12月19日時点)ですから、79駅は約6%にあたる計算です。
その79駅に期待されている役割は、自衛隊や警察、国交省のテックフォースといった救援部隊の活動拠点、緊急物資の基地、復旧・復興の拠点です。国交省の資料では「地域の一時避難所」は別の層に置かれていて、防災道の駅の主な役割としては挙げられていません。避難者を受け入れる施設として選ばれた79駅ではない、ということです。

指定された駐車場ほど、災害時は一般車を締め出せる
避難を考えるうえで効いてくるのは、535カ所のほうです。防災拠点自動車駐車場に指定されると何が変わるのか。道路法第48条の29の3が、道路管理者に与える権限をこう書いています。
当該防災拠点自動車駐車場について、広域災害応急対策の拠点としての利用以外の利用を禁止し、又はその利用を制限することができる
つまり、災害が起きたときに一般の車を入れないようにできる駐車場のリストが535カ所という数字です。避難できる場所が535カ所ある、と読むのは逆です。
禁止や制限をするときは、入口などに対象を明らかにした道路標識を設けなければなりません(同法第48条の29の4)。埼玉県は県内9カ所の指定状況を公表し、「広域災害応急対策車両専用」の標識が立ったら車両を移動させるよう協力を求めています。
同じページには、こんな注記も添えられています。「一般利用を禁止または制限する場合においても、一般利用者の避難用駐車スペースは確保しています」。締め出しの範囲は拠点として使う区画に限られる、という説明です。ただし何台分かは書かれていません。
そこへ大勢が車で押し寄せれば足りなくなる、という当たり前の話は残ります。
能登半島地震で、のと里山空港が実際にしたこと
制度の説明より、起きたことのほうが分かりやすいかもしれません。国交省が2025年5月に公表した資料に、令和6年能登半島地震での使われ方が3件載っています。
防災道の駅「のと里山空港」(石川県輪島市)は、発災直後は避難してきた人へ水や毛布などの備蓄品を配りました。その後は支援物資の集配拠点と道路啓開支援センターになっています。届いた物資の一部は、防災道の駅「あらい」(新潟県妙高市)に各駅の備蓄品を集めて運んだものでした。
福岡県うきは市の防災道の駅「うきは」からは、停電や断水でも使える防災用コンテナ型トイレが、被災地の道の駅「あなみず」(石川県穴水町)へ運ばれました。1月12日17時30分から使われはじめ、1日あたり300回程度。うきはでの利用の約10倍です。役目を終えたあとは能登町へ移して使われました。
避難してきた人へ備蓄品が渡った事実はあります。ただ、時間が経つほど拠点としての機能が前に出てきました。ここに車を置き続けられる前提で計画を立てるのは無理がある、と読むのが妥当です。
受け入れを決めている自治体はある。山形市の場合
一方で、市町村が自分の判断で車中泊避難の場所を用意している例があります。山形市の「車中避難場所」がそれです。
対象には道の駅やまがた蔵王の西側駐車場(205台)が入っています。この道の駅は2025年5月に防災道の駅へ追加選定された1駅でもありますが、山形市が車中避難場所として決めたのは、その選定とは別の話です。
使えるようになる条件も決まっています。風水害なら警戒レベル3以上の避難情報が出て、山形市が開設を要請したとき。地震なら規模に応じて市が要請したとき。開設状況は市のホームページやSNSで知らされます。
利用する側にも手続きがあります。氏名、連絡先、車種、ナンバーの届け出です。窓口は道の駅の総合案内所(9時から17時30分)、電話、ファクス、ウェブフォームの4経路。物資の提供はないので、毛布や飲料水、食料は自分で持ち込むことになります。
そして市はこう書いています。「避難場所として開設する期間以外において、避難場所としての利用を目的に立ち入らないでください」。前日から行って待つ場所ではない、という線がここに引かれています。

千葉県柏市のように、車中泊避難そのものを「一般的には推奨されない避難方法」と書いている自治体もあります。柏市は、避難所の外で避難する場合でも最寄りの避難所で避難者カードを登録するよう求めています。安否確認と物資の配布がそこを起点に動くからです。
受け入れる、勧めない、条件付きで開く。自治体ごとに答えが違います。
台風が来る前に開く2つのページ
やることは多くありません。落ち着いているうちに、次の2つを見ておけば判断がつきます。
住んでいる市町村のサイトで「車中泊避難」または「車中避難場所」を検索してください。制度を持っている自治体なら、開設の条件、場所の一覧、届け出の方法までそこに書かれています。何も出てこないなら、その市町村は車中泊避難を前提にした受け皿を用意していない、と考えて動くことになります。
もう1つがハザードマップです。道の駅は川沿いや海沿いにあることが珍しくありません。防災道の駅の選定要件にも、ハザードエリアにある場合は適切な対応が講じられていること、という但し書きが付いています。指定されているかどうかより、その駐車場が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っていないかのほうが先に効きます。

平常時に道の駅へ泊まれるかどうかは、また別の話です。国交省は道の相談室で、疲労回復のための仮眠は構わないとしたうえで「駐車場など公共空間における宿泊利用は基本的にご遠慮いただいています」と回答しています。線の引かれ方は道の駅で車中泊は禁止か|仮眠と宿泊の境界線にまとめました。
よくある質問
防災道の駅の一覧に自分の近所の駅がある。台風の前日に行って停めていてよいか
その道の駅と市町村が車中避難場所の取り決めをしていない限り、根拠のない駐車になります。山形市の例のように制度を持つ自治体でも、開設していない期間の立ち入りは断られています。
前日に動くなら、行き先は市町村が示している避難場所です。
指定避難所の駐車場で車中泊してよいか
避難所を運営している市町村の指示に従うことになります。柏市は、避難所の敷地内で車中泊する場合に運営上の都合で移動を頼むことがあると明記しています。
どこで夜を過ごすにしても、最寄りの避難所で登録を済ませておくと安否確認と物資が届きます。
キャンピングカーなら別の扱いになるか
個人の車は同じです。自治体と日本RV協会のあいだで結ばれている災害時のキャンピングカー提供協定は、協会側が車両を出す枠組みで、自分の車を持ち込む話ではありません。仕組みは総務省×日本RV協会「災害時キャンピングカー提供協定」とはで整理しています。
装備の面で有利なのは確かで、そこはキャンピングカーは「動く防災シェルター」でまとめました。停める場所の話とは分けて考えたほうが安全です。
避難中にエンジンをかけっぱなしにしてよいか
季節によっては切りたくないところですが、条例でアイドリングを制限している自治体があります。一酸化炭素の危険も別にあります。都道府県ごとの規定は車中泊のエンジンかけっぱなしは違反?25都道府県の条例と罰則にまとめました。
ペットを連れて避難するかどうかでも判断は変わります。施設ごとのルールは犬連れで車中泊できるか|RVパーク684件のペット同伴ルールが参考になります。
更新日と出典
2026年8月30日更新。本文中の数値と条文は同日に確認したものです。制度は年度で変わるので、実際に動く前にご自身の市町村のページで最新の記載を確認してください。
- 国土交通省「『防災道の駅』を追加選定!」(令和7年5月14日)https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001932.html
- 同 報道発表資料本文および別紙(PDF)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001888550.pdf
- 国土交通省「『防災道の駅』として39駅を初めて選定しました!」(令和3年6月11日)https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001460.html
- 国土交通省「『防災道の駅』について」(選定要件・一覧・全国駅数)https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/pdf/bosai_base.pdf
- 国土交通省「『防災拠点自動車駐車場』を指定します」(令和8年4月15日)https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_002085.html
- 道路法 第48条の29の2から第48条の29の8(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000180
- 国土交通省 道の相談室「休憩施設『道の駅』」https://www.mlit.go.jp/road/soudan/soudan_03_04.html
- 埼玉県「防災拠点自動車駐車場について」(2026年5月14日掲載)https://www.pref.saitama.lg.jp/a1006/mitinoeki/bousaikyoten.html
- 山形市「車中避難場所」(令和6年3月21日更新)https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/kurashi/bousai/1006390/1006393/1010135.html
- 柏市「車中泊避難」(令和8年3月23日更新)https://www.city.kashiwa.lg.jp/bosaianzen/anshinanzen/disaster/disaster_ready/syatyuuhaku.html
- 内閣府「令和8年度『防災週間』及び『火山防災の日』について」(令和8年7月31日 中央防災会議決定)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/week/r8bousaiweek.html





