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FFヒーターは、車の燃料タンクから軽油やガソリンを少しずつ取り出して燃やし、温めた空気を車内へ送る暖房です。
燃焼用の空気は車外から取り込み、排気も車外へ出します。車内の空気を使って火を燃やす仕組みではありません。
冬の車中泊で知りたいのは、一晩で燃料と電気がどれだけ減るか、そして自分の車のどこにどう付けられるか、の2点でしょう。
ベバスト(Webasto)とエバスペッヒャー(Eberspächer)の公式仕様と取付説明書をもとに整理しました。
一晩10時間で減る燃料と電気
FFヒーターは出力を無段階に上げ下げして、設定温度を保ちます。燃料と電気の消費もそれに合わせて動くので、メーカーは「最小〜最大」の幅で公表しています。
その幅を、夜9時から朝7時までの10時間分に直すと次のとおりです。
| 機種(燃料) | 暖房出力 | 燃料(1時間) | 燃料(10時間) | 消費電力 | 電気(10時間・12V) |
|---|---|---|---|---|---|
| ベバスト エアトップ2000STC(軽油) | 0.9〜2.0kW | 0.12〜0.24L | 1.2〜2.4L | 15〜30W | 12.5〜25Ah |
| ベバスト エアトップ2000STC(ガソリン) | 1.0〜2.0kW | 0.14〜0.27L | 1.4〜2.7L | 15〜30W | 12.5〜25Ah |
| ベバスト エアトップEvo 40(軽油) | 1.5〜3.5kW | 0.18〜0.43L | 1.8〜4.3L | 15〜40W | 12.5〜33Ah |
| エバスペッヒャー エアトロニックS3 D2L(軽油) | 0.85〜2.2kW | 0.10〜0.28L | 1.0〜2.8L | 6〜28W | 5〜23Ah |
| エバスペッヒャー エアトロニックM3 D4L(軽油) | 1.05〜4.0kW | 0.12〜0.49L | 1.2〜4.9L | 6〜37W | 5〜31Ah |
出典:Webasto「Air Top 2000 STC」データシート(2024年7月)・同「Air Heaters for the RV Market」(2024年8月)、Eberspächer「Unlimited comfort for complete independence」(2021年10月)。10時間分と12V換算は公表値から計算※1
車内が温まって出力を絞っている時間が長いほど下限に、外が冷え込んで全開に近い時間が長いほど上限に寄ります。
国内でエバスペッヒャー製ヒーターを扱うホワイトハウスキャンパーも、室内温度が上がるにつれて燃料消費量は段階的に少なくなると説明しています。
燃料は、2kWクラスなら一晩で最大2.8Lです。ヒーターは走行用と同じタンクから燃料を取るので、残量の少ないまま夜を迎えないよう、泊まる前の給油を習慣にしておくと安心です。
Evo 40には、最大6時間まで出力を4.0kWへ上げる「ブースト」があり、その間は1時間0.49L・55Wまで増えます。
電気は、12Vのサブバッテリーから1時間に0.5〜3.3A(ブースト中は約4.6A)を取り続ける計算です。エアトップ2000STCなら一晩で12.5〜25Ah、100Ahのサブバッテリーの1〜2.5割にあたります。
見落としやすいのは電圧の下限で、エアトップ2000STC(12V仕様)の運転電圧範囲は10.5〜16Vと決められています。冷蔵庫や照明と同じバッテリーを使うなら、朝まで10.5Vを割らない容量があるかを先に見ておきましょう。サブバッテリーの容量の考え方は、家庭用エアコンは何時間動くかの記事で詳しく扱っています。
2kWか4kWか、ガソリン車か軽油車か
出力の目安は車の大きさです。ホワイトハウスキャンパーの車種別装着目安では、2kWクラスは軽キャンパーから標準的なハイエースのバンコンまで。
4kWクラスが候補になるのは、ハイエースの特装タイプとバスコンです。キャブコンは2kW・4kWのどちらも目安に入ります。長い温風ダクトで複数の部屋を暖める車向けには、エバスペッヒャーがキャンピングカー専用の4kW機(エアトロニックM3 Recreational)を用意しています。
燃料は車と同じものを使います。ハイエースのガソリン車ならガソリン仕様です。
ベバストの取付説明書では、軽油仕様の本体は0〜90度傾けて取り付けられますが、ガソリン仕様は水平にしか付けられません。床下の空きスペースに斜めに収める、という逃げ方がガソリン車では使えない点は覚えておきたいところです。
高原に泊まるなら、高度補正の上限も確認しておきます。エアトップ2000STCは標高1,500mまで(操作パネル「マルチコントロール」と組み合わせると2,200m)、Evo 40は2,200m(高地仕様は5,500m)です。
エバスペッヒャーの現行世代(エアトロニック3)は高度センサーを内蔵し、仕様によって標高5,500mまで自動で補正します。
どこに付けるか|後付けの条件と費用
本体の置き場所は、床下、二重床の中、シートの台座、収納庫が一般的です(エバスペッヒャーのキャンピングカー向けカタログ)。
ホワイトハウスキャンパーの取付事例では、軽のバモスホビオは助手席の座面下、ステップワゴンのバンコンはボディの下に付けています。
ベバストの取付説明書(2022年11月版)は、排気ガスによる中毒・窒息の危険があるとして、本体を乗員のいる室内の外に付けるよう定めています。※2
座席下や収納庫に付けるなら、その機種の最新の取付説明書で認められた方法かを施工店に確認してください。
同じ取付説明書が挙げる設置場所の条件は、次のとおりです。
- 飛び石などで傷まない場所で、できるだけ水はねを受けない
- 車の最大渡河水位(走行中に水が届く高さの上限)より上
- 燃焼用空気の取り入れ口と排気口を分ける
- 燃焼用空気と排気の接続部は、すべて車外に出す
- 本体は付属のベースシール(ガスケット)を挟んで台座だけで支える
- エンジンの排気管の輻射熱が当たる位置には付けない
燃料は、車の燃料タンク(または燃料の配管)から専用の取り出し管で分岐させる方式です。ベバストは、樹脂製の燃料タンクに穴を開けることを禁じていて、後付けでは燃料ポンプと残量計のユニット側に取り出し管を付けるよう指示しています。
燃料配管を車内に通すことも禁止です。電源は12V仕様なら20Aのヒューズを介して取ります。
施工は、メーカーの講習を受けた人がいる店に頼むのが前提です。ベバストの取付説明書は、取付作業者の条件にWebastoのトレーニング修了を挙げ、説明書に従わない取付や純正以外の部品の使用では、ヒーターの型式認証(ECE R122。EU指令の地域で適用される認証)が無効になるとしています。

費用の例は、札幌カールームが公式サイトに載せている次の価格表(税込)です。
| 項目 | 税込価格 |
|---|---|
| ベバスト エアトップ2000STC RVキット本体 | 243,329円 |
| 調整ダイアルスイッチ | 14,960円 |
| 燃料取出管・取付工賃 | 17,578円 |
| ヒーター取付工賃 | 83,600円 |
| 送風ダクト | 4,235円 |
| 送風グリル取付 | 8,910円 |
| 合計 | 372,612円 |
2026年9月28日時点の掲載価格です。取付場所や車両の状態によっては、追加作業と追加料金がかかるとしています。タイマーが欲しい場合は、操作パネルのマルチコントロールが30,140円です(1日3回まで・7日先まで予約)。スマホ操作には別製品のThermoConnectが要り、同店の価格表には載っていません。
車検の手続きについては、国土交通省の「軽微な変更」の範囲に収まるかが分かれ目です。
部品を付けた後の寸法の変化が長さ±3cm・幅±2cm・高さ±4cm以内、車両重量の変化が普通自動車で±100kg、小型自動車と軽自動車で±50kg以内なら、構造等変更の手続きは要りません。ヒーター本体はエアトップ2000STCで2.6kg、エアトロニックM3 D4Lで4.5kgです。車体の外寸を変えずに床下や座席下へ収めれば、この範囲に入ります。
ただし、手続きが不要でも、付けた状態で保安基準に適合させておくのは使用者の責任です。
排気と一酸化炭素|付け方と停め方
ベバストの取付説明書は、排気による中毒と窒息の危険として、排気を車外にだけ出し、排気管を車内に通さないよう求めています。排気口の条件は次のとおりです。
- 排気がさえぎられずに流れ、出口がふさがれない
- 進行方向へ向けて排気しない
- 地面に近づけすぎない
- 床下カバーから10mm以上突き出させ、出口から150mm以内で固定して、地面に対して90度±10度の向きで排気する
- 燃えやすい部品や熱に弱い部品に向けない
排気管は内径22mm、長さ0.5m以上で、燃焼用空気の吸気管と合わせて5m以内(消音器を付けると2.5m以内)。引き回しは、結露が流れ出るようヒーターから下り勾配に。
暖房機の国際基準(ECE R122)も、排気の出口は換気口・温風の取り入れ口・開いた窓から排気が車内へ入らない位置に置くこと、燃焼用の空気を車室から取らないことを定めています。
使う側が守ることは、次の4つです。
- ガレージのように閉め切った場所では使わない。タイマーやリモートでの自動始動も同じ
- ガソリンスタンドや燃料タンクのある施設では使わない。給油の前にはヒーターを止める
- 枯れ草や落ち葉の上、燃えやすい物の近くでは使わない。排気口は地面を向いているので、秋の草地では出口の下を確認する
- 煙が出続ける、燃焼音がおかしい、燃料のにおいがする、エラーでの停止が繰り返す。こうした症状が出たら、ヒューズを抜いて使用をやめ、サービス工場へ相談する
雪の夜に気を付けたいのは停め方です。排気口のある側を雪の壁や吹きだまりに寄せて停めると、出口がふさがれて排気が流れなくなります。寝る前と夜中に雪が積もったときは、車体の下の出口を確認してください。
車内には一酸化炭素警報器を置いておくと、万一のときに気付けます。選び方は車中泊の一酸化炭素警報器は「何ppmで何分」で選ぶにまとめました。

止めるときの手順もひとつあります。FFヒーターは停止操作の後もしばらくファンを回して、燃焼室を冷ます仕組みです。
ベバストの取付説明書は、停止後およそ240秒は電源を切らないよう求めています。メインスイッチでサブバッテリーを切る車は、ヒーターを止めてから4分待ってから切りましょう。温風の吹き出し口の前に燃えやすい物を置かないことも、同じ説明書に危険事項として書かれています。
冬の前に|秋のうちに一度動かす
北海道のキャンピングカー販売店、キャンピングレンタサービス工業は、冬に備えてFFヒーターを試運転しておくよう案内しています。見るのは、燃料ポンプが正常に動くか、吹き出し口に虫が入っていないか、外の吸気口と排気口の状態です。
軽油を使うFFヒーターの燃料パイプはとても細く、夏の燃料が残っていると冬に固まって詰まる、というのが同社の説明です。秋口のうちにヒーターを使い、冬用の軽油を管の中に行き渡らせておきます。
水回りの冬支度はキャンピングカーの水抜き|凍結させない冬支度の手順で扱っています。9月・10月の夜にそもそもFFヒーターが要るかは、秋の車中泊の寒さ対策|FFヒーターは要るのかを参考にしてください。
よくある質問
寝ている間つけっぱなしでも大丈夫ですか?
エバスペッヒャーはキャンピングカー向けカタログで、エアトロニックは効率がよく静かなので、長時間や夜間の使用も問題ないとしています。
前提は、ここまでの条件がそろっていることです。排気口が車外で下を向き、雪や壁でふさがれていないこと、閉め切ったガレージの中ではないこと。一酸化炭素警報器は、そのうえで置いておく最後の備えです。
エンジンをかけて暖房するのと比べて、燃料はどれくらい違いますか?
ホワイトハウスキャンパーは大型トラックの例で、アイドリングの燃費を1時間1.8L、エアヒーターを1時間0.18Lとして比べています。
燃料の差に加えて、アイドリングは自治体の条例で制限されている場所がある点にも注意が必要です。都道府県ごとの規定は車中泊のエンジンかけっぱなしは違反?で確認できます。
更新日:2026年9月29日(仕様・価格は2026年9月28日時点の各社公式情報)
出典
- Webasto「Air Top 2000 STC」データシート(2024年7月):https://www.webasto.com/content/dam/global-brand/business-fields/heating/air-heater/documents/240806_Datasheet_Air%20Top%202000_STC_EN.pdf.coredownload.inline.pdf
- Webasto「Air Heaters for the RV Market(Air Top 2000 STC and Air Top Evo 40 / 55)」(2024年8月):https://www.webasto.com/content/dam/global-brand/business-fields/heating/air-heater/documents/240813_Datasheet_AirTopSerie_RecreationalVehicles_EN.pdf.coredownload.inline.pdf
- Webasto「Air Top 2000 STC」製品ページ(日本語):https://www.webasto.com/ja-jp/heating/air-heater/air-top-2000-stc.html
- Webasto「Air Top 2000 STC」製品ページ(米国):https://www.webasto.com/en-us/heating/air-heaters/air-top-2000-stc.html
- Webasto「Installation Instructions Air Heater Air Top 2000 STC」(Ident No. 9043156A、2022年11月。販売店掲載の英語版PDF):https://www.butlertechnik.com/downloads/cms/7341/webasto-air-top-2000-stc-vehicle-heater-installation-manual.pdf
- Eberspächer「Unlimited comfort for complete independence(Climate control systems / Recreational vehicles)」(2021年10月):https://www.eberspaecher.com/fileadmin/data/corporatesite/pdf/en/2_fuel_operated_heaters/gp/eberspaecher-brochure-camping-cars-en.pdf
- ホワイトハウスキャンパー「Air Heater(エアヒーター)」概要・特徴:https://www.whitehouse.co.jp/eberspaecher/product/airtronic/
- ホワイトハウスキャンパー「Air Heater(エアヒーター)」スペック一覧表:https://www.whitehouse.co.jp/eberspaecher/product/airtronic/spec.php
- ホワイトハウスキャンパー「Air Heater(エアヒーター)」取り付け事例/応用例:https://www.whitehouse.co.jp/eberspaecher/product/airtronic/structure.php
- ホワイトハウスキャンパー「Air Heater(エアヒーター)」各部の名称と働き:https://www.whitehouse.co.jp/eberspaecher/product/airtronic/partsname.php
- 札幌カールーム「べバストヒーター」:https://www.car-room.co.jp/sub2.html
- 国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「構造等変更の手続」:https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/inspect/structural-change/index.html
- キャンピングレンタサービス工業「キャンピングカーの冬支度」:https://www.camperservice.jp/snow/
注釈
※1 12V換算は「消費電力(W)×10時間÷12V」で出した目安です。実際の電流はバッテリーの電圧や気温で変わります。エアトップ2000STC(12V・軽油)の消費電力は、単体データシートと取付説明書では15〜30W、RV向けデータシートでは13〜30W、米国の製品ページでは14〜29Wと、資料によって表記が少し異なります。表は単体データシートと取付説明書の値です。国内でエバスペッヒャー製ヒーターを販売するホワイトハウスキャンパーのスペック表では、エアトロニックD2の消費電力は8〜34W、燃料消費量は0.1〜0.28L/hです。
※2 ベバストの日本語製品ページは、エアトップ2000STCを車室外・車室内・床下に設置できるとしています。一方で取付説明書(2022年11月版)は、排気ガスによる中毒の危険として、本体を乗員のいる室内の外に設置するよう記載しています。座席下や収納庫に付ける場合の扱いは、施工店に確認してください。





