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冬の朝、ソーラーには日が当たっているのに、サブバッテリーの残量が一向に増えない。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を積んだ車で、故障を疑う前に確かめたいのが、バッテリーを守る低温保護です。
低温保護を持つリチウムは、0〜5℃あたりを下回ると充電を止めます。何℃で止まるのか、ヒーター内蔵モデルはどの充電で温まるのか、乗らない冬はどう置いておくのか。Victron、Renogy、BougeRVなどの公式仕様と取扱説明書をもとに整理しました。
冷えたリチウムに充電してはいけない理由
リチウムイオン電池は、充電するとリチウムイオンが負極の中へ入り込む仕組み。氷点下ではこれがうまく進まず、負極の表面に金属リチウムが析出します(リチウムメッキ)。
LiTimeは、これが容量の低下を招き、内部短絡のリスクを高めると説明しています。Victronの取扱説明書(2026年1月版)はさらに厳しく、5℃未満で充電するとセルが恒久的に傷むとしています。
そのため各社とも、電池自身か周りの機器で充電を止める仕組みを持たせています。止める温度は、下の表のとおり5℃と0℃の2通りです。
| 製品 | 充電できる温度 | 放電できる温度 | 寒いときの動き |
|---|---|---|---|
| Victron Lithium Battery Smart(ヒーターなし) | 5〜50℃ | -20〜50℃ | 外付けのBMSが、電池温度5℃(既定値)を下回ると充電器を止める |
| LiTime 低温保護シリーズ(ヒーターなし) | 0℃以下で停止、5℃以上で再開 | -20℃まで | 電池内蔵のBMSが充電を止める |
| BougeRV BJ12100(ヒーター内蔵・100Ah) | 0〜55℃ | -20〜55℃ | 充電中に1℃以下になるとヒーター(60W)が入り、8℃以上で止まる |
| Renogy Pro 12V 100Ah・200Ah(ヒーター内蔵) | -20〜55℃※1 | -20〜60℃ | 5℃を下回ると、充電電流を使ってヒーターが入り、10℃を超えると止まる |
出典:Victron「Lithium Smart Battery Manual」rev 21(2026年1月)、LiTime公式ブログ(2025年10月10日)、BougeRV BJ12100取扱説明書(2022年版の英語記載)、Renogy米国サイト掲載の仕様。温度は華氏表記を摂氏に換算(2026年10月1日確認)
放電は、どの製品も-20℃まで使えます。冬に困るのは「使えない」ことより「貯められない」ことです。
充電を止めているのは、電池か、BMSか、充電器か
冬に充電が止まったとき、まず知っておきたいのは、自分の車ではどこがそれを判断しているかです。止める場所は3通り。
1つ目は電池の中のBMS(バッテリー管理装置)。LiTimeやBougeRVのように、BMSごと電池に内蔵している製品は、充電器が電気を送ってきても電池側で受け付けません。
2つ目は外付けのBMS。Victronのリチウムは電池の外にBMSを置く方式で、電池が冷えるとBMSが走行充電器やソーラーのチャージコントローラーへ停止信号を送ります。充電開始の下限温度は既定で5℃です。
3つ目が充電器そのものの機能です。VictronのMPPTチャージコントローラー(SmartSolar)と走行充電器(Orion XS)には「低温カットオフ」があります。MPPTは出荷時には無効で、有効にしたときの既定値が5℃です。
しかも両機種とも、電池の温度を別の機器(温度センサーのSmart Battery Senseや、温度センサー付きのバッテリーモニター)から受け取れる構成でなければ働きません。Orion XSは、この保護で止まると「Warning 151(電池温度が低すぎる)」を表示。取扱説明書の説明では、電池を守るための停止で、必ずしも異常を示すものではありません。
電池にもBMSにも低温保護がなく、充電器のカットオフも有効になっていない組み合わせだと、氷点下でもそのまま充電が続きます。リチウムに載せ替えた車や中古車では、どの層で止めているかを施工店に確かめておくと安心です。
ヒーター内蔵モデルは「充電中にだけ」温まる
冬の対策として増えているのが、電池の中に発熱パッドを持つ自己発熱モデルです。ここで押さえておきたいのは、ヒーターの電気をどこから取っているか。
BougeRVの取扱説明書は、ヒーターが入るのは充電しているときだけで、電池の電気を使って温め続けることはないと明記しています。Renogy Proも、ヒーターが動く条件を安定した充電電流としています。100Ahは4Aを超える電流、200Ahは6A以上です。
つまり、充電器が止まっている夜のあいだは、ヒーター内蔵でも電池は外気とともに冷えていきます。温まるのは、翌朝に充電が始まってからです。
温めるのにかかる時間と電気も、公表値から見えます。
- Renogy Pro 200Ah:ヒーター85W。全力運転で1時間に約8℃上がる
- LiTime 自加熱シリーズ:-20〜5℃で充電器につなぐとヒーターが入り、約80〜100分で10℃まで上がる
- BougeRV BJ12100:ヒーター60W
Renogy Pro 200Ahを0℃から10℃まで温めると、約1時間15分、電気にして約106Wh(85W×1.25時間)です※2。LiTimeの説明でも、充電が始まるのは温度が上がってから。それまでのあいだ、充電器の電気はヒーターに使われます。

走行充電・ソーラー・外部電源、冬はどれが入るか
ヒーターが「充電電流で動く」以上、冬にいちばん効くのは、大きな電流を長く流せる経路です。3つの充電経路を、この条件で並べます。
| 充電経路 | 冬の入り方 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 走行充電(DC-DCチャージャー) | 数十A(Victron Orion XSなら最大50A)を安定して流せるので、ヒーターの作動条件は満たしやすい | 冷えた電池は温まるまで充電が始まらない。短い移動では温めるだけで終わる |
| ソーラー | 冬は発電量そのものが少なく、朝夕は電流も小さい | ヒーター内蔵でも、作動に必要な電流に届かない時間が長い |
| 外部電源(RVパークなど) | 夜通し流せるので、温めてから満充電まで進められる | 電源のある場所に泊まる必要がある |
走行充電では、移動時間が効いてきます。Renogy Pro 200Ahの例なら、0℃の電池を10℃にするまでに1時間強。朝の買い出しで30分走っただけでは、電池は温まる途中で、充電はほとんど進みません。
Victronのリチウムはヒーターを持たないので、電池そのものが5℃を超えるまで待つことになります。FFヒーターで車内を暖めると、室内側に積んだ電池は温度が上がっていきます。FFヒーターが一晩で使う電気は、キャンピングカーのFFヒーター|燃料・電気と後付けで計算しています。
ソーラーは、冬に最も頼りにしにくい経路です。キャンピングカーのソーラーは1日何Wh入るかで出したとおり、屋根に水平に載せた200Wのパネルが12月に1日で生むのは、東京で約430Wh、札幌で約236Whです。
札幌の12月なら、Renogy Pro 200Ahを0℃から10℃へ温める約106Whだけで、1日の発電量の4割半ばを使う計算です。加えて、朝夕の弱い日射では、ヒーターの作動に要る電流(Renogy Proで4〜6A)に届かない時間が長くなります。
外部電源は、冬の弱点を埋めやすい経路です。車載の充電器が夜通し電流を送れるので、ヒーター内蔵モデルは温めながら満充電まで進めます。泊まる先の電源が何アンペアかは、RVパークの電源は何アンペアかにまとめました。

「減りが早い」と感じるのは、容量と残量計のずれ
冬に電気の減りが早いと感じる理由は、もうひとつ。寒いと、取り出せる量そのものが減ります。
Victronは、Lithium Battery Smart 100Ahの取り出せる容量を、25℃で100Ah、0℃で80Ah、-20℃で50Ahとしています(放電電流1C以下、100Ahなら100A以下の条件)。
FFヒーターのベバスト エアトップ2000STCが一晩10時間で使う電気は12.5〜25Ah。車外の収納庫に積んだ100Ahの電池が0℃まで冷えたとすると、取り出せる80Ahのうち16〜31%を暖房だけで使う計算です。
さらに、残量計の数字もずれます。残量(SoC)はバッテリーモニターが電流を数えて出しているもので、温度で減った容量までは反映されません。Victronは、低温で放電するときはSoCより電池電圧とセル電圧を見るよう求めています。
冬は残量計の%を割り引いて読み、電圧も一緒に確認しておきましょう。
鉛(AGM・ディープサイクル)は、充電より凍結に気をつける
VictronのAGM・ゲルのデータシートには、リチウムのような「何℃以下は充電禁止」という下限が書かれていません。代わりに求められているのが温度補償です。
電池温度が10℃を下回る時間が長いときは、12Vの電池で1℃につき0.024Vずつ充電電圧を上げます(25℃が基準)。0℃なら、25℃の設定より0.6V高くなる計算です。チャージコントローラーや走行充電器の電池の種類を鉛に合わせ、温度補償を有効にしておけば、この調整は充電器が行います。
ただし、鉛にも寒さの弱点があります。容量は低温で大きく下がり(Victron)、放電したまま置くと電解液が凍ります。
電池工業会の「自動車用バッテリーのよくある質問」によると、満充電の電解液(比重1.280程度)は凍りにくい一方、放電して比重が1.100くらいまで下がると凍る温度は-10℃前後、さらに放電して1.000付近では0℃付近です。凍ると体積が増え、電槽が割れる原因になります。
リチウムは「冷えていると充電できない」、鉛は「減ったまま冷やすと凍る」。同じ冬でも、気をつける場面が逆になります。
乗らない冬の保管|残量と切り離し
冬のあいだ車を動かさないなら、サブバッテリーは回路から切り離して置くのが基本です。
Victronは、使わない期間はバッテリースイッチを切るか、ヒューズを抜くか、プラス端子を外すよう勧めています。警報装置やリレー、充電器の逆流といった小さな電流でも、少しずつ電池を減らすためです。低電圧でBMSが止めた後に放置すると、10mAの電流でも200Ahの電池が8日あまりで傷むと書かれています。
保管するときの残量の指定は、メーカーでばらばらです。
| 製品 | 保管時の残量 | 定期充電 | 保管温度 |
|---|---|---|---|
| Victron Lithium Battery Smart | 十分に充電してから切り離す(満充電で25℃なら最長1年) | 記載なし | -45〜70℃ |
| Renogy Pro | 30〜50% | 3〜6か月に1回。使い始める前に満充電 | -25〜65℃ |
| BougeRV BJ12100 | 75% | 6か月ごと | 短期-20〜45℃、長期0〜35℃ |
| 鉛(Victron AGM・ゲル、電池工業会) | 充電しておく。放電したまま置かない | Victron AGM・ゲルの自己放電は20℃で月2%未満。涼しい場所なら最長1年は補充電なしで保管できる | 記載なし |
出典:各社の取扱説明書・データシート(2026年10月1日確認)
BougeRVの長期保管温度は0〜35℃なので、冬日の多い地域の車内に置いたままだと範囲を外れます。冬日(最低気温0℃未満の日)が地点ごとに何日あるかを表にしたのが、キャンピングカーの水抜き|凍結させない冬支度の手順です。水回りの冬支度と同じ日に、バッテリーの切り離しも済ませておくと忘れません。

ソーラーをつないだまま保管するなら、電池が冷えたときにどこかで充電が止まる構成かどうかの確認を。電池にもBMSにも低温保護がない組み合わせでは、冬の朝のソーラーが氷点下の電池をそのまま充電します。
よくある質問
低温保護の温度を下げれば、冬も充電できますか?
Victronのリチウムは、アプリ(VictronConnect)で充電開始の下限温度を-20〜20℃の範囲で変えられます。ただし同社の取扱説明書は、5℃より下に設定すると保証の対象外になると明記しています。
冬も充電したいなら、考えるべきは電池を温める方法です。ヒーター内蔵モデルに替える、電池を室内側に置いて車内を暖める、電源のある場所に泊まる、のいずれかです。
鉛からリチウムに載せ替えるとき、冬に向けて何を確認すればいいですか?
充電を止める仕組みがどこにあるかです。電池がBMS内蔵で低温保護を持っているか、持っていなければ外付けのBMSか充電器の低温カットオフで止められるか。
あわせて、チャージコントローラーと走行充電器の設定を鉛用からリチウム用に変え、温度補償を切ります。Victronは、リチウムには温度補償が不要なので、無効にするか0mV/℃にするよう指示しています。鉛の設定のままだと、冬の低温で充電電圧が上がってしまいます。
更新日:2026年10月1日(仕様は2026年10月1日時点の各社公式情報)
出典
- Victron Energy「Lithium Smart Battery Manual」rev 21(2026年1月):https://www.victronenergy.com/upload/documents/Lithium_Battery_Smart/15958-Manual_Lithium_Smart_Battery-pdf-en.pdf
- Victron Energy「MPPT solar charger manual SmartSolar MPPT 100/30 & 100/50」Rev 12(2026年6月):https://www.victronenergy.com/upload/documents/Manual_SmartSolar_MPPT_100-30__100-50/29694-MPPT_solar_charger_manual-pdf-en.pdf
- Victron Energy「Manual – Orion XS 12/12-50A DC-DC battery charger」Rev 12(2026年9月):https://www.victronenergy.com/upload/documents/Orion_XS_12-12-50A_DC-DC_battery_charger/124067-Orion_XS_DC-DC_battery_charger-pdf-en.pdf
- Victron Energy「Gel and AGM Batteries」データシート:https://www.victronenergy.com/upload/documents/Datasheet-GEL-and-AGM-Batteries-EN.pdf
- Renogy「12V 100Ah/200Ah Smart LiFePO4 Battery w/ Bluetooth & Self-Heating | Pro Series」製品ページ(米国サイト掲載の仕様):https://www.renogy.com/products/pro-renogy-12v-100ah-200ah-smart-lifepo4-battery-w-bluetooth-self-heating
- BougeRV「Lithium Iron Phosphate Battery(LiFePO4)12V 100Ah」取扱説明書(2022年版・英語記載の値):https://cdn.shopify.com/s/files/1/2672/9544/files/ISE176_12V-100Ah_Battery_user_manual.pdf?v=1685083881
- LiTime公式ブログ「LiTime 自加熱バッテリー VS 低温保護バッテリー【寒冷地バッテリー比較】」(2025年10月10日):https://jp.litime.com/blogs/news/litime-self-heating-vs-low-temperature-battery
- 一般社団法人 電池工業会「自動車用バッテリーのよくある質問」:https://www.baj.or.jp/safety/car/car06.html
- Webasto「Air Top 2000 STC」データシート(2024年7月):https://www.webasto.com/content/dam/global-brand/business-fields/heating/air-heater/documents/240806_Datasheet_Air%20Top%202000_STC_EN.pdf.coredownload.inline.pdf
注釈
※1 Renogy Proの充電温度範囲-20〜55℃は、内蔵ヒーターで電池を温めてから充電する前提の表記です。ヒーターが動く条件(5℃未満で、100Ahは4Aを超える、200Ahは6A以上の安定した充電電流)を満たさないと、氷点下では充電が進みません。
※2 Renogy Pro 200Ahの「全力運転(85W)で1時間に約8℃上昇」という公表値から出した目安です。外気が低いほど電池から逃げる熱が増えるため、実際にはこれより時間と電気がかかります。





